格安ホームページ制作会社に発注してもよいかどうか
世の中には価格の低さを一番のアピールポイントとしている「格安ホームページ制作」の制作会社があります。価格の安さは確かに魅力ですが、安さばかりをアピールする制作会社に制作を依頼をして大丈夫なのでしょうか。
今回はそんな「格安ホームページ制作」の制作会社に依頼をしてもよい場合とそうでない場合の見極め方についてお話します。 格安ホームページ制作会社にこれから依頼をしようと考えている方はぜひご参考にしてください。
前提
お話の大前提として、「依頼者は本気でホームページ制作のプロジェクトを成功させたいと思っている」という前提をおきます。 依頼者の中には「たまたま会社のウェブ担当になっただけで、プロジェクトの成否にはあまり興味が無い」という方もいます。 そのような方は今回のお話の対象ではありません。
格安ホームページ制作会社に発注してもよい場合とそうでない場合
早速結論からですが、格安ホームページ制作会社に依頼をすることについては一概に「あり」とも「なし」とも言えません。 「あり」になるか「なし」になるかはプロジェクトの目的と状況によって変わってきます。
そもそも「格安ホームページ制作会社とはどのような会社なのか」という点を押さえておくとその後の話がスムーズなのでまずはそこから見ていきます。
いわゆる「格安ホームページ制作会社」には大きく分けて 2 つのタイプの会社があります。
- A) 戦略として格安を選んでいる会社
- B) やむなく格安にしている会社
A) 戦略として格安を選んでいる会社 : これは、経験とロジックに基づいた明確な戦略がありその上で「格安」を選択している会社です。 そのような会社は、サービス内容や業務オペレーションを適切に設計し「格安で出しても十分な価値と利益が生み出せて事業が回る仕組み」を作り上げています。 また別のパターンとして、創業後間もない制作会社や独立したてのフリーランスが実績を増やすことを優先してあくまで短期的に価格を抑えている場合もあります。
B) やむなく格安にしている会社 : こちらは A) とは異なり、仕方なく「格安」を選んでしまっている会社です。 品質に自信が無いために標準的な料金をもらうことにためらいがあったり、そもそも標準的な料金では仕事が取れなかったり、適切な付加価値のアピールができなかったりと理由はさまざまですが、積極的に「格安」を選んだのではなく、消極的に「格安」を選ばざるをえなくなったパターンです。
見た目は同じ「格安」でも両者は大きく異なります。 ですので、「格安ホームページ」の宣伝文句を見たときに最初に見るべきは、その会社が A) と B) のどちらのタイプかということです。
もし A) なら話はシンプルです。 単に「格安」だからといって頼んではいけない理由はありません。 その戦略が実際に機能しているかどうかはチェックする必要がありますが、もしそこに十分な根拠が得られたなら、格安をウリとしていない一般の制作会社と同じ流れで発注を検討するとよいでしょう。
A) の場合はシンプルです。 問題は B) の場合です。
B) の場合は、「格安」である理由をその会社の立場になって考えてみることが必要です。 「格安」を選ぶ理由にはさまざまなものがあります。
- 提供品質が低く標準的な料金をもらうことにためらいがある
- 標準的な料金では受注がもらえず営業ができない
- 付加価値がつけられないので「格安」しかアピールできるポイントが無い
実際の理由は会社によってさまざまですが、ネガティブな動機から来ていることが少なくありません。 発注側はまずはそこを理解しておくべきです。 そして、候補の会社が「格安」路線なのであれば、実際どのような理由で「格安」なのかを知るように努めるべきです。
B) の会社の場合は、その上で発注してもよい場合とそうでない場合とがあります。 前者の方がパターンが少なくシンプルなのでそちらを先にあげます。
発注してもよい場合
B) の会社に発注してもよい場合は大きく次の 2 パターンがあります。
- y1) 選択肢が他に無い場合
- y2) 目的が達成できる場合
y1) 選択肢が他に無い場合 : そもそも選択肢が他に無い場合は、頼んでもよいかどうか以前に依頼せざるをえないと言えます。代表的な例は、標準的な料金の制作会社に依頼するだけの資金・予算が無い場合です。予算が無い場合にはどうすることもできません。また、知人の紹介や付き合い等でその会社に発注しなくてはならない場合や、その会社に仕事を発注することそのものにプロジェクトの成否を超えた重要な意義がある場合等もこれにあたります。
y2) 目的が達成できる場合 : 品質に不安のある格安の制作会社に依頼してもその目的が十分に達成できるという場合も、格安会社に頼むという選択肢はアリでしょう。 格安の制作会社に依頼すると品質やコミュニケーションの面でデメリット・制約があることがありますが、そのあたりを十分に把握できていてリスク対応の準備も十分なら、「格安」に不安を感じてためらう必要はありません。 例えば、格安ホームページによくある大量生産テンプレートサイトでも十分に価値を得られる場合や、あくまでも発注・制作の経験値を積むためのトライアルプロジェクトの場合等がこれにあたります。 また、社内あるいは協力会社にウェブ制作を熟知した社員がいて、格安制作会社に頼んでも品質の維持とリスク対応が十分できると確信できるような場合も稀ですがこれにあてはまります。
発注してはならない場合
原則的に、上の「発注してもよい場合」にあてはまらない場合は格安制作会社に依頼してはいけません 。 より正確に言うと、頼んではいけないのではなく、 「格安」を重要な選定基準に制作会社を選んではいけません 。
なぜなら、 ウェブ制作で重要なのは、目先の制作費の安さではなく、そのプロジェクト全体での費用であり、費用対効果だからです 。 そして、冒頭に述べたとおり、 ウェブプロジェクトにおける制作パートナーは CSF (成否を左右する要因)です 。
制作費の安さというのはプロジェクトの成否のほんの一要素ですし、「格安」には相応のデメリットと制約が伴います。 そのようなデメリットに気づかずに「格安」につられて制作会社を選んでしまうと、コストを抑えるつもりがかえって高くつくことにもなるでしょう。
ビジネスで作るウェブサイトの 99% は「作って終わり」ではありません。 ウェブプロジェクトの上位目的を達成するには、まずはサイトを無事に公開し、その後少なくとも数ヶ月、長ければ 5 〜 8 年の長期にわたり適切な運用と保守を行う必要があります。 PDCA を行いときには構成やデザイン・機能・運用方法の変更を行う必要があります。 そして、サイトのライフサイクルの終わりである次回のリニューアルの際には新システムへの移行を適切に行わなくてはなりません。
サイトのライフサイクル全体を通じてスムーズ・適切に価値を引き出すには、制作会社からの継続的な協力が不可欠です 。 そのことを考えると、制作費が格安であることには特に強い魅力は無いことがおわかりいただけることと思います。 本当に成功を望むのであれば、「格安」の裏にある理由や「格安」と一体のデメリット・制約の方がむしろ気になってくるはずです。
とはいえ、上で述べたとおり、目的達成や費用対効果の面でその制作会社が最適だと思われる場合は、「格安」だけを理由に毛嫌いする必要はありません。 「格安」以外の面も見て総合的にその会社がベストであるなら、その会社に依頼するのがよいでしょう。
結局、 格安かどうかにかかわらず、多面的・総合的に見てベストと思える制作会社を選ぶことが大切です 。 「格安の制作会社に頼みたい」「格安の制作会社ってどうなんだろう?」という疑問をお持ちの方のご参考になれば幸いです :)
最後に注意喚起です。 世の中には、表向きは「格安」と謳っておきながらその実さまざまな方法で発注者を陥れ法外な料金をまきあげようとする悪質な制作会社があります。 最近ではあまり耳にしなくなりましたが、リース契約でホームページ制作を行うような会社もその一例です。 ホームページをリース契約にする形は一般的ではないので、発注をご検討中の方でリース契約を提案されている方はぜひ注意してください。 中小企業省が注意喚起もしたりしているので、ご存知でない方はチラシ等に目を通してみてください。