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「おすすめホームページ制作会社○社」を鵜呑みにしてはいけない理由

ウェブ制作関連の調べ物で検索をすると「東京都のおすすめホームページ制作会社○社をプロが厳選!」「大阪府の優良 web 制作会社」といったタイトルの記事が目につくことがあります。 細かくあげるとパターンはたくさんありますが、 SEO チューニングの結果なのか、だいたい次のようなパターンが共通しています:

  • プロが厳選!おすすめのホームページ制作会社○選
  • 【〇〇(地域名)・最新版】ホームページ制作会社を徹底比較!
  • 【〇〇(地域名)】人気ホームページ制作会社○社
  • 〇〇(地域名)で実力のあるホームページ制作会社○選

今回は、このような記事を参考にしようとされている方への注意喚起を行いたいと思います。

このような記事には有用な情報も含まれてはいますが、あえて誤解を招く書き方をしてあるものも多く、基本的には「ほとんど参考にならないもの」と思っておくのがよいと思います。 特にウェブ制作の発注経験を持たない方やウェブ制作についてあまりよく知らない方は、これらの記事を「そうなんだ」と鵜呑みにしてしまう可能性もあると思いますので、ぜひ注意してください。

なぜ、「おすすめのホームページ制作会社」の記事を鵜呑みにしてはいけないのか、その理由を以下に説明します。

  • 理由 1. 根拠に乏しいから
  • 理由 2. 実体験にもとづいてないから
  • 理由 3. 本心からのおすすめではないから

理由 1. 根拠に乏しいから

第一の理由は「根拠に乏しいから」です。

これらの記事では「おすすめ」ということばが使われていますが、何をもっておすすめなのか、どういった軸で評価したものなのかがほとんど述べられていません。 述べられているものも中にはありますが、その理由は「それってその会社の主張をそのまま引用しただけじゃないの?」というものばかりです。

試しに代表的な記事をいくつか覗いてみると、以下のような理由を沿えて「おすすめ制作会社」として紹介してあります。

  • 「全国幅広く対応」
  • 「幅広い業界のホームページ制作に対応」
  • 「CMSの導入の依頼が可能」
  • 「独自のオリジナルデザインを採用」
  • 「各ステップごとの顧客とのコミュニケーション」
  • 「公開後も続く手厚いサポート」

みなさんはこれを見てどう思われますか? 「それって制作会社のウェブサイトに載っている情報をそのまま載せただけじゃないの?」「そこに発注したこと無いのに適当に書いてない?」と突っ込んでみたくはならないでしょうか。

私は、「CMSの導入の依頼が可能」「各ステップごとの顧客とのコミュニケーション」「公開後も続く手厚いサポート」といった理由等を見ると、「逆にそうじゃないホームページ制作会社ってあるの?!」と聞いてみたくなります。

よく読めば根拠に乏しいものでも記事の体裁がある程度しっかりしていれば「それなりに調査して書かれたものなのかなぁ」と思ってしまうので、注意が必要です。

理由 2. 実体験にもとづいてないから

理由の 2 つめは「実体験にもとづいていないから」です。

ふつう、人が人に商品やサービスのおすすめをする場合は、実際に自分自身で利用してよかったものをおすすめするものですが、「おすすめホームページ制作会社」まとめ記事の多くはそうではありません。 おすすめも何も、その会社に発注をしたことが無い人が書いている記事も多く見られます。

私が特に誤解を招きやすいと感じるのは、発注者と制作会社との間に立ち「仲介」や「相見積もり」のサービスを行う会社が書く記事です。 それらの仲介会社は「掲載料」「紹介料」等の形で制作会社からお金をもらう関係にありますが、その関係が「おすすめ制作会社」の一覧に無関係とはかぎりません。

直接「広告料」としてお金が支払われている場合はもちろんですが、名目上は「掲載料」「紹介料」で支払われていてもそれで掲載の有無や紹介の仕方が変わったり制作会社による原稿チェックが入ったりするようであればそれは事実上広告であり問題です。

そのような記事がすべて怪しいと言うわけではありませんが、そのようなおすすめ記事は本来の意味の「おすすめ」ではなくステマ的なものだということを受け手側は認識しておくべきです。

理由 3. 本心からのおすすめではないから

理由の 3 つめは「本心からのおすすめではないから」です。

これを言うと身も蓋も無い感じですが、多くの記事の書き手は「おすすめ」と紹介する制作会社のことを本当におすすめだとは思っていません。 実際には制作会社との利害関係であったり SEO 的な目的のためだけに記事を書いている場合が多いと思います。 もしかしたら、外部のライターに依頼して書かれた記事も中にはあるかもしれません。

私が「書き手は本心からおすすめだと思っていない」と考える理由の大きなひとつは、本当におすすめの制作会社であればとても 10 社近くもあげられないからです。 これは実際にウェブ制作会社と取引をしたことがある方ならおそらく 9 割以上の方が共感されることと思います。

「人におすすめしたくなるほどの制作会社」との関係は通常長続きします。 ウェブサイトのリニューアル頻度が一般に 3 〜 7 年であることから考えても、発注者と制作会社の取り引きは関係が良好なかぎり短くても 2 〜 3 年、長ければ 10 年以上になるのが自然です。

人におすすめしたくなるほどの会社であればプロジェクトがひとつ終わったら「次もお願いしますね」となるのがふつうで、そうすると関係が長期化し、結果として、人におすすめできる制作会社は長年発注者をやっている人でもたかだか数社、になるはずです。 それを 10 社近くもほいほいと「おすすめです」とあげられるのは不自然です。

中には広告代理店やコンサルタントの立場で本当に何十社・何百社もの制作会社と取り引きをしてきて、その中から厳選したおすすめの会社を 10 社近くあげられる人もあるかもしれません。 しかし、逆にそれだけ数をこなしている人の場合は「それだけこなしたら、各制作会社のこと本当に理解できていますか?」「たまたまあたった担当者の評価とその会社の評価、区別できてますか?」という疑問が湧いてます。

という 3 つが、私が「おすすめのホームページ制作会社」のまとめ記事を鵜呑みにすべきではないと考える理由です。

ただし、これらのまとめ記事には有益な情報がまったく無いのかというと必ずしもそうではありません。 たとえば、制作会社をほとんど知らない方や制作会社への発注をしたことがない方がこれらの記事を読むと、短時間で多くの制作会社の存在を知れるメリットがあります。 自力でひとつずつピックアップしていたら出会えなかった優れた制作会社を知れる場合もあると思います。 つまり、単純に「発注先の候補を集める」「制作会社を評価するための目を養う」という目的で参考にするのであれば役立ちます。

逆に、上にあげた理由のどれひとつとしてあてはまらない「おすすめホームページ制作会社」の記事がもし見つかったら、それは非常に参考になると思います。 具体的には次の条件をいずれも満たすような記事です。

  1. 明確でかつ納得のいく根拠が示されている
  2. 書き手自身の実体験にもとづいている
  3. 書き手の本心からのおすすめである
  4. 紹介する制作会社は多くて 4 〜 5 社ほど

私自身は見ていませんが、そのような記事も中にはあると思います。 制作会社選びのご参考になれば幸いです。