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今更聞けない?「 CMS 」とは?

ウェブ制作における基本用語である「 CMS 」について説明します。

尚今回ご説明する CMS とはウェブサイトを構築・運用するためのツールのことです。 別の意味の CMS を調べてきた方は検索エンジンで検索し直してみてください。

想定読者

本記事では CMS がどういうものなのかよく知らない方を読者に想定しています。 「わかりやすさ」と「正確さ」の両立が難しいところでは「わかりやすさ」を優先しているため、厳密には正確ではない説明があるのでご留意ください。

目次

  • CMS とは
  • コンテンツとは
  • CMS の特徴
  • CMS の種類
  • シェア上位の CMS
  • CMS とは呼ばないもの
  • まとめ

CMS とは

CMS とは Content Management System (コンテンツ・マネジメント・システム)の頭文字を取った略語で、 コンテンツの管理を支援するソフトウェア のことです。

本来はウェブ上のコンテンツだけにかぎらずコンテンツを管理するためのソフトウェア全般を指しますが、ウェブ上のコンテンツを扱う Web CMS (WCMS) が有名なので、 CMS といえば「ウェブ上のコンテンツを管理するためのソフトウェア」を指すものという捉え方が一般的です。

CMS の利用数は年々増加しており、 2018 年時点で世界中のウェブサイトの半数の 50% 超が CMS を使って構築・公開されています。

ちなみに、残りの 50% は CMS 以外の独自のシステムまたは静的 HTML が多いのではないかと思います(統計データが無いので推測です)。

コンテンツとは

CMS の文脈における「コンテンツ」の定義は実はあいまいで、利用する CMS や文脈によって意味が異なります。 唯一絶対の答えは無いので、ここでは「広義のコンテンツ」と「狭義のコンテンツ」という切り口から説明します。

広義のコンテンツ

広義の定義では、コンテンツとは 人間向けに作られた情報 のことです。 つまり、最終的に人間が消費することを意図して作られたものはすべてコンテンツと言えます。 対象範囲が非常に広く、小さな粒度のものでいえば文章・画像・図表・イラスト・音声・音楽・動画等、大きな粒度のものでいえば書籍・アルバム・歌劇・映画等がコンテンツに含まれます。

英語の Wikipedia の Content (media) のページには次のように書かれています。

In publishing, art, and communication, content is the information and experiences that are directed towards an end-user or audience. Content is "something that is to be expressed through some medium, as speech, writing or any of various arts". Content can be delivered via many different media including the Internet, cinema, television, smartphones, audio CDs, books, e-books, magazines, and live events, such as speech, conferences and stage performances.

翻訳:

出版やアート、コミュニケーションの世界において、コンテンツとはエンドユーザーあるいは聴衆に向けて作られた情報や経験のことです。 コンテンツは「スピーチや文章、制作物等のメディアを通して表現されたもの」です。 コンテンツは、多くのメディアを使って届けられます。 メディアには、インターネット、映画館、テレビ、スマートフォン、音声 CD 、書籍、電子書籍、雑誌、スピーチや会合や舞台パフォーマンス等のライブイベント等があります。

それこそ人が消費するために作られた情報なら何でもコンテンツということができます。

狭義のコンテンツ

広義のコンテンツの定義は上のとおりですが、 CMS の文脈でいうコンテンツはもう少し狭い範囲のものを指します。 CMS の文脈でいうコンテンツとは一般に デジタルコンテンツ のことを指します。 デジタルコンテンツとは、講義のコンテンツのうち 実体が電子的なデータで、コンピュータに格納しネットワークごしに受け渡しできるもの です。

具体的な例をあげると、ウェブサイト上の文章や画像、 Podcast 音声や YouTube 動画、オンラインコースの教材や試験等がデジタルコンテンツに含まれます。 デジタル広告なんかもデジタルコンテンツの一種と言えるでしょう。

CMS 独自のコンテンツ

CMS によっては「コンテンツ」がより具体的な何かを指すこともあります。 CMS によってまちまちなので一概には言えませんが、たとえば私がよく知る Drupal という CMS では「ウェブサイトの中の各ページに固有の情報」を「コンテンツ」と呼ぶことがあります。

コンテンツについての説明の最後に、 O'Reilly 社が出している『 Web Content Management 』という書籍の中のコンテンツの説明を引用してご紹介します。 私はこれがとてもよい定義だと思います。

How is content management any different from managing any other type of data?

There are to key differences:

  • Content is created differently.
  • Content is used differently.

...

Created by Humans via Editiorial Process

Content is created through "editorial process." This process is what humans do to prepare information for publication to an audience. It involves modeling, authoring, editing, reviewing, approving, versioning, comparing, and controlling.

...

Intended for Human Consumption via Publication to an Audience

Content is data we create for a specific purpose: to distribute it with the intention of it ultimately being consumed by other humans. Sure, it might be scooped up by another computer via an API and rearranged and published somewhere else, but eventually the information is going to make its way to a human somewhere.

意訳:

コンテンツマネジメントは他のタイプのデータの管理とは何が異なるのでしょうか?

大きな違いが 2 つあります:

  • コンテンツは作り方が違う。
  • コンテンツは使い方が違う。

...

人間が編集プロセスを通して作る

コンテンツは「編集プロセス」を通して作られます。 このプロセスは人間が情報を受け手に公開するための準備として行うものです。 編集プロセスには、モデリング・作成・編集・校閲・承認・バージョン管理・比較・コントロール等が含まれます。

...

人間が消費するためのものとして受け手に公開される

コンテンツは人間が特定の目的のために作るものです。 その目的とは、最終的に他の人間に消費されることを意図して配布する、ということです。 確かに、他のコンピュータが API を使って取得されたり、再構成して別の場所で公開されたりすることはありますが、最終的にはその情報はどこかで人間に行き着きます。

CMS の特徴

ウェブサイトに求められる機能は大部分が共通しているため、どんな CMS にもほぼ共通した機能や特性があります。 中には例外もありますが、世間で定番的によく使われる CMS には次のような特徴が共通しています。

  • ユーザー管理機能
    • ユーザ認証・認可
    • 一般ユーザ・管理者ユーザの区分
  • データ管理機能
    • データモデリング
    • データの取得・集約
    • メディアファイルの管理
  • コンテンツ編集機能
    • コンテンツの編集
    • コンテンツの加工
  • 表示・出力機能
    • ページ表示
    • ナビゲーション
    • テーマ
  • セキュリティ機能
    • 基本セキュリティ
    • 開発者向け API
  • 拡張可能
    • プラグインシステム

ユーザーアカウントを登録してログインすることができ、さまざまなコンテンツを登録・管理できる。 登録したコンテンツの再編集や加工が CMS 上で直感的に行えて、ブラウザからのアクセスに対して整形されたレイアウトでコンテンツを表示する。 専門的なセキュリティ知識を持たない人が利用すること、不特定多数の人がサイトにアクセスすることを前提に、情報漏えいや意図しない処理の実行を防ぐ。 テーマやプラグインで見た目や機能をある程度カスタマイズできる。 このような機能はほぼどの CMS にも備わっています。

これらの機能はいわば CMS としてあって当たり前の「衛生要因」であり、他の CMS との差別化をはかるための「差別化要因」はありません。 一昔前であればこれらの機能が存在することが「ウリ」になりえましたが、近年ではこのあたりの機能はもはやあって当然で、その上で、わかりやすさや使いやすさ、その他プラスアルファの機能で CMS は差別化を図る時代になっています。

CMS の種類

CMS を分類するにはそれこそ無数の切り口がありますが、利用者視点で見たときの最も大きな切り口はおそらく次の切り口です。

  • インストールが必要かどうか
  • オープンソースかプロプライエタリか

インストールが必要かどうか

CMS をこの切り口で分けると次の 2 つに分かれます。

  • A) 「クラウドサービス」タイプ
  • B) 「インストール」タイプ

「クラウドサービス」タイプというのは、利用者がソフトウェアをインストールする必要がなく、ユーザー登録をすればウェブ上でそのまま利用できるタイプのものです。 「クラウドサービス」タイプはさらにウェブサイト用とブログ用に分かれます。 ウェブサイト用で有名なものには Squarespace ・ Jimdo ・ Wix ・ Weebly ・ Google サイト等があります。 ブログ用のものには、おそらく一般の方にも有名なアメーバブログ・ライブドアブログ・はてなブログ・ Medium ・ Blogger 等があります。

他方の「インストール」タイプというのは、利用者が自分でソフトウェアをダウンロードしてウェブサーバーに設置する必要があるものです。 シェアが高く有名なものとしては、 WordPress の他に Joomla! ・ Drupal ・ Magento ・ TYPO3 ・ Sitecore ・ concrete5 ・ Movable Type 等があります。

WordPress だけは少しややこしくて、 WordPress というソフトウェアそのものは「インストール」タイプですが、「クラウドサービス」タイプのものも WordPress.com で提供されています。

国内の「おすすめ CMS 一覧」等の記事では「インストール」タイプのものを紹介していることが多いですが、海外の CMS の統計では「クラウドサービス」タイプのものが含まれていることが一般的です。

オープンソースかプロプライエタリか

CMS を分類する上でもうひとつの大きな切り口は「オープンソースかプロプライエタリか」です。

  • A) 「オープンソース」タイプ
  • B) 「プロプライエタリ」タイプ

「オープンソース」タイプというのは、ソフトウェアのソースコードが一般に公開されていて、誰もが無償で入手できるものです。 「オープンソース」タイプの CMS の多くは世界中のボランティアの人たちによって開発されています。

利用する側にとっての「オープンソース」タイプの CMS のメリットには、「自由に改変・拡張できる」「無償で利用できる」「特定の企業の方針や存続性に依存せずに済む」といったものがあります。 逆のデメリットとしては「バグやトラブルで困っても自己責任」「厚いサポートが受けられない」「人気が高いものはクラッカーの攻撃の標的になりやすい」等があります。

他方の「プロプライエタリ」タイプというのは、特定の企業によって開発され、その企業が所有権を有するものです。 利用するには一般にライセンス料がかかります。 ちなみに、プロプライエタリ( proprietary )というのは「所有権がある」という意味の形容詞です。

利用する側にとっての「プロプライエタリ」タイプの CMS のメリットには、「問題が起こったときに責任を取ってもらえる」「厚いサポートが受けられる」「ベンダー企業が有名な場合、社内説得が楽」「人気のオープンソース CMS に比べると利用者が少ないためクラッカーの攻撃の標的にされづらい」といったものがあります。 逆のデメリットには「有償で、導入するだけで高い費用がかかることがある」「自由に改変・拡張ができない」「人気のオープンソース CMS に比べると進化のスピードが遅い」といったものがあります。

ただしこれらのメリット・デメリットはあくまで一般論・傾向に過ぎません。 そのためすべての CMS にこれらのメリット・デメリットがあてはまるわけではないことに注意してください。 たとえば、「オープンソース」タイプの CMS でも、コミュニティが大きくてコミュニティメンバーから比較的厚いサポートが受けられるものもありますし、自由に改変・拡張ができるとはいっても現実問題難しいものもあります。 同様に「プロプライエタリ」タイプの CMS も、有償といってもウェブにかかる全体のコストから見るとほぼ無償に近いぐらいの低コストで導入できる CMS もありますし、セキュリティが甘くクラッカーの攻撃の標的になりやすいものもあります。 これらはあくまでも一般的な傾向にすぎないことに注意してください。

その他一般的な CMS の切り口として、「国内産か海外産か」「日本語情報が充実しているかどうか」「扱える制作会社が多いかどうか」「どのプログラミング言語で作られているか」「 EC 機能の有無」といったものがあります。 このあたりの話題については別記事でも書いているのでよろしければ参考にしてください。

シェア上位の CMS

CMS のシェアランキングが各所で公開されています。 調査方法等によって多少異なりますが、上位の顔ぶれはどの調査でもほぼ共通しています。

これら↓の CMS がよくランキング上位にあがります:

中でもシェア 1 位の WordPress が突出しており、シェア 2 位の Joomla! におよそ 10 倍の大差を付けています。 2018 年時点の情報では、 CMS で作られたサイトのうち 60% 、 CMS 以外で作られたサイトも含めた世界中の全サイトのうち約 30% が WordPress で作られていると言われています。 一般の方でも「他の CMS は知らないけど WordPress だけは聞いたことがある」という方は多いと思いますが、この統計から見るかぎり CMS = WordPress という見方はあながち間違っていません。

ウェブサイトリニューアルの間隔は一般に 2 ・ 3 年〜長ければ 10 年ほどです。 そんな中 WordPress は近年もじわじわシェアを伸ばし続けているので、少なくともこの先数年、もしかしたら 10 年ぐらいは現在の WordPress 一強状態は変わらないと思います。 ですので、「どの CMS を選んだらよいのかわからない」「特に使いたい CMS は決まっていない」という方は、とりあえず WordPress を選んでおけばそう大きく間違うことは無いでしょう。

CMS のシェアに興味のある方はよろしければ次の記事も参考にしてみてください。

統計的なデータをもとにおすすめ CMS もご紹介しています:

CMS とは呼ばないもの

逆に、 CMS とは呼ばないものもいくつかご紹介します。 これらを知っておくと CMS とそうでないものの境界線が明確になり見通しがよくなるでしょう。

「 CMS を広い意味で捉えるなら CMS の一種になるが、一般には CMS とは区別されるもの」として、次のようなものがあります。

  • CRM システム
  • EC カート
  • DAM システム
  • 静的サイトジェネレーター
  • ウェブアプリケーションフレームワーク

このそれぞれについての説明はここではしませんので、興味のあるものがもしあれば検索して調べてみてください。

まとめ

ということで、 CMS とは何ぞやというお話を網羅的にしました。 CMS に興味がある方、 CMS とは何なのか改めて知りたい方のご参考になれば幸いです。

参考

CMS について理解を深めたい方には、記事中に取り上げた『 Web Content Management 』という書籍がおすすめです。 英語の書籍に抵抗が無い方はぜひ一度お手に取ってみてください。