Dyno

ウェブ制作やソフトウェア開発における「要件」と「要求」の違い

ウェブ制作やソフトウェア開発のプロジェクトに関わると必ず耳にすることばに「 要件 」と「 要求 」というものがあります。 今回はこの「要件」と「要求」の違いについて説明したいと思います。

さっそく結論ですが、 「要件」と「要求」に意味の違いはありません 。 単に日本語での呼び方が違うだけです。 ソフトウェア開発の本家である英語圏ではどちらも同じ「 requirements 」です。

と言うと、「要件と要求とは別物だ」とまことしやかに言われていることを聞いたことのある方は「どちらが本当なんだろう?」と疑問に思われることでしょう。 この点について説明します。

  1. なぜ「要件」と「要求」というふたつのことばがあるのか?
  2. なぜ一部のウェブ制作会社・ソフトウェア会社は「要件と要求は違うもの」と言っているのか?

1. なぜ「要件」と「要求」のふたつのことばがあるのか?

特に深い意味は無いと私は思います。 これはおそらく「 requirements 」の概念が輸入されたときの単なる翻訳のブレが原因です。

「カンバン」や「カイゼン」等のごく一部の例外を除きほとんどの ICT 用語は英語圏で生まれて日本に輸入されますが、「 requirements 」という概念が輸入されたときに「要件」と「要求」というふたつの流派が生まれた。 ただそれだけのことだと思います。

2. なぜ一部のウェブ制作会社・ソフトウェア会社は「要件と要求は違うもの」と言っているのか?

これは単にその会社の人たちが英語の文献を読まない、もしくは読めないことが原因だと思います。

例えば

  • 要求とは、顧客が求める「こと」である
  • 要件とは、要求を満たすためにシステム(「もの」)が満たすべきポイントである

といった説明がなされることがありますが、あえてこの分類をするなら、英語圏では前者は business requirements 、後者は software requirements ( system requirements )と呼ばれます。 私が知るかぎりでは、「要件」「要求」に相当する言葉の使い分けは英語圏では行われていません。 このことはソフトウェアの設計や業務分析に関する英語の文献をある程度読んでいる方であればおそらく誰でも知っています。

ということで「要件」と「要求」は原則同じものであり、ローカルルールとして違いがあったとしてもささいな違いです。 ですので、「要件と要求の違いを君は知っているか?」「要件と要求はまったく別物なんだよ」等と言う人がいれば、その人は(英語が重要な)ソフトウェア開発に携わっていながら英語の情報にまったく触れていないガラパゴスな人である可能性が高いと私は思います。