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【 2018 年版】 CMS の種類まとめ

今回はウェブサイト構築のためのツールである CMS の種類についてまとめてみました。

CMS の形はウェブサイトのニーズの移り変わりを受けてどんどん変わっていくので、例えば、 2008 年と 2018 年、 2028 年でそれぞれ適切な分類の軸は変わってきます。 本記事は 2018 年時点での状況を踏まえた CMS 分類です。

前提

この記事では、「 CMS 」ということばを次の意味で(広義で)使用します。

  • ウェブサイト(≒ホームページ)を作るためのソフトウェア
  • ウェブサービスや静的サイトジェネレータ等も含まれる

CMS の種類を分ける分類軸

世の中に CMS は無数に存在するので、分類軸は 1 つだけでは不十分です(以下読み進めていただければ意味がおわかりいただけるものと思います)。 以下、 CMS の性格を把握するのによい主要軸をいくつかご紹介します。

分類軸 A: ダウンロード型 vs. ウェブサービス型

CMS にはダウンロード型の CMS とウェブサービス型の CMS が存在します。 これは利用形式による分類です。 ダウンロード型というのは、利用者が自ら公式サイト等から CMS パッケージをダウンロードしてきてセットアップし、ウェブサーバに設置するタイプのものです。 ウェブサービス型は、ダウンロード等の手間なく、ウェブ上でアカウント登録すればそのまま管理画面が利用できるタイプの CMS です。

例:

  • ダウンロード型: WordPress
  • ウェブサービス型: Jimdo

分類軸 B: オープンソース型 vs. プロプライエタリ型

CMS にはオープンソース型とプロプライエタリ型が存在します。 これはライセンス視点での分類です。 オープンソース型というのは、かんたんにいうと CMS のソースコードが一般に公開されており、利用者が自由にコードを閲覧・改変・再配布できるタイプのものです。オープンソース型は無料で入手できることが一般的です。 一方のプロプライエタリ型は、企業が自社のソフトウェアとして開発しソースコードを公開していないタイプの CMS です。

例:

  • オープンソース型: EC-CUBE
  • プロプライエタリ型: RCMS

分類軸 C: ページ動的生成型 vs. 静的ページ設置型

CMS にはページ動的生成型と静的ページ設置型が存在します。 これはブラウザからのリクエストに対して HTML をどのように返すかという視点での分類です。 短縮して「動的型」「静的型」と呼ばれることもあります。 ページ動的生成型は、ウェブサーバ上でプログラムが走りブラウザからのリクエストがあれば HTML を動的に生成して返すものです。 静的ページ設置型は、一連のウェブページをあらかじめ生成し HTML ファイルとして保存しておいて、ブラウザからのリクエストがあればそれら HTML ファイルを返すものです。

例:

  • ページ動的生成型: Drupal
  • 静的ページ設置型: Movable Type

分類軸 D: データベース使用型 vs. データベース不使用型

CMS にはデータベース使用型とデータベース不使用型があります。 これは文字どおりデータベースを使用するかどうかの視点での分類です。 データベース使用型は、コンテンツ(≒ページ)の保存先としてデータベースを使用するタイプの CMS です。 このタイプの CMS を利用するには、ウェブサーバ上でデータベースを利用できることが条件となります。 データベース不使用型は、コンテンツの保存先にデータベースを使用しないタイプの CMS です。 データベースの代わりに静的ファイル等を使用します。

例:

  • データベース使用型: concrete5
  • データベース不使用型: DreamWeaver

分類軸 E: EC 対応型 vs. EC 非対応型

CMS には EC 対応型と EC 非対応型があります。 これも文字どおり EC (通販)機能の有無での分類です。 EC 対応型は、 CMS 本体もしくは定番のプラグインで EC 機能が利用できるもののことです。 本体には EC 機能が無いがプラグインで EC が利用できるものの代表が WordPress です。 WordPress の定番 EC プラグインである WooCommerce は 2018 年時点で 400 万以上のサイトで使用されているとも言われています。 インストール型 CMS でシェア 3 位の Drupal のサイト数が 100 万前後なので、 WooCommerce ベースの EC サイトはシェア第 3 位の CMS よりも多い計算になります。 つまり、 WordPress は実質世界で最もシェアの高い EC 対応型 CMS のひとつです。 EC 非対応型は、文字どおり EC 対応型以外の CMS です。 ただし、この境界線はあいまいです。 EC 用プラグインのある CMS はたくさんありますが、安定性が十分でないもの、メンテナンスが十分に行われていないものもよくあります。 それらを「 EC 対応だ」と思って利用するとリスクが大きいので、そのようなものは EC 非対応型に分類すべきというのが私の考えです。

ちなみに、日本の経済規模はここ 20 年ほどほぼ横ばいですが、 EC の規模(流通額)は年率 8-15% で年々伸び続けています。

EC 市場規模と EC 化率

出典: 経済産業省( 電子商取引に関する市場調査の結果をまとめました | 経済産業省

EC の流通額は世界で見ても伸びており、 EC は近年 CMS に最も必要とされる機能のひとつです。

例:

  • EC 対応型: WordPress (WooCommerce)
  • EC 非対応型: -

分類軸 F: 国産型 vs. 海外産型

CMS には国産型と海外産型があります。 もう少し厳密に言うと、ローカル型とグローバル型と言った方がよいかもしれません。 国産型は、日本国内の企業が「日本語 CMS 」として開発している CMS です。 海外産型は、日本以外の企業や開発者が開発している CMS です。 デフォルトの言語が英語で、日本語その他の言語に翻訳されて使われる形が一般的です。 日本の場合は日本語圏の経済規模が世界的に見て大きいこともあり、国産 CMS が豊富にあります。

例:

  • 国産型: a-blog cms
  • 海外産型: Sitecore Web Experience Manager

分類軸 G: 多言語対応型 vs. 多言語非対応型

CMS には多言語対応型と多言語非対応型があります。 これも文字どおり、多言語機能の有無での分類です。 国際的な商取引の数は年々増加し続けており、 CMS でも各コンテンツやウェブサイト全体を多言語化できる機能へのニーズが高まっています。 多言語対応型というのは CMS 本体あるいは定番のプラグインで多言語化ができる CMS のことです。 ただし「多言語対応」と一口に言っても、細かく分類すればさまざまな機能に分かれるので、大きい括りでいう「多言語化機能」のうちサブ機能をどれだけ備えているかは CMS やプラグインによってまちまちです。 多言語化は設計が複雑になりやすい機能のひとつで、多様な要件に対応できる「完璧な多言語 CMS 」は 2018 年時点で数個あるかないかだと私は思います。 一方の多言語非対応型は文字どおりそのまま、多言語化機能の無いものです。 多言語機能が開発効率や動作パフォーマンスを下げる要因になったりもするので、多言語機能があればよいかというと必ずしもそうとはかぎりません。

例:

  • 多言語対応型: PowerCMS (on Movable Type)
  • 多言語非対応型: -

分類軸 H: 汎用型 vs. 特化型

CMS には汎用型と特化型があります。 汎用型というのは、多くのウェブサイトで必要となる機能を備え、さまざまなウェブ要件に応えられる CMS のことです。 一方の特化型は、特定の用途や機能に特化したタイプの CMS のことです。 ニーズの移り変わりにあわせて CMS の中心的機能も変わっていくので、明確な線引は難しいのですが、多くのウェブサイトに必要とされる機能を備えておらず特定の機能のみをアピールしている CMS は特化型と言ってよいでしょう。

例:

  • 汎用型: WordPress
  • 特化型: ペライチ

以上です。 最後におまけでもうひとつ重要な分類軸をご紹介します。

(おまけ)分類軸 I: WordPress vs. WordPress 以外

(当然ですが) CMS は WordPress と WordPress 以外の CMS に分かれます。 これは他の分類とは性格が異なりますが 2018 年時点での CMS のマーケットシェアを考えるとこの視点は必ず持っておくべきだと私は思います。 2018 年前半の時点で WordPress の CMS マーケットにおけるシェア(サイト数)は 60% 、 CMS 以外のサイトを含めた場合でも 30% を越えました。 WordPress には他のすべての CMS の利用数を足し合わせてもかなわないぐらいの圧倒的なシェアがあり、世界のウェブサイトのうち 3 つに 1 つが WordPress を使用している計算です。 SimilarTech によると、 2018 年 6 月時点での WordPress のサイト数は 2700 万サイトとなっています。

CMS 世界シェア

WordPress の有名プラグインの中には他の CMS よりも多く使われているものが多数あります。

  • Contact Form 7: 500 万サイト以上
  • WooCommerce: 400 万サイト以上
  • bbPress: 30 万サイト以上

このように、 WordPress は CMS の王様でありスタンダードです。 私自身は WordPress のプロではありませんが、 自社で利用する CMS の選定の際は必ず WordPress を候補に含めるべきだと考えます。

サンプル比較表

上の分類軸 A 〜 H を使って比較表のサンプルを作ってみました。 比較するのは次の 4 つの CMS です。

WorPress Jekyll Wix ペライチ
A ダウンロード ダウンロード ウェブサービス ウェブサービス
B オープンソース オープンソース プロ プロ
C 動的 静的 - -
D DB 使用 DB 不使用 - -
E EC 対応 EC 非対応 EC 対応 EC 対応
F 海外産 海外産 海外産 国産
G - 多言語非対応 多言語非対応 多言語非対応
H 汎用型 特化型 汎用型 特化型

まとめ

以上、 CMS の種類を知るための分類軸についてでした。

最後のおさらいに分類軸のタイトルだけ再掲しておきます。

  • 分類軸 A: ダウンロード型 vs. ウェブサービス型
  • 分類軸 B: オープンソース型 vs. プロプライエタリ型
  • 分類軸 C: ページ動的生成型 vs. 静的ページ設置型
  • 分類軸 D: データベース使用型 vs. データベース不使用型
  • 分類軸 E: EC 対応型 vs. EC 非対応型
  • 分類軸 F: 国産型 vs. 海外産型
  • 分類軸 G: 多言語対応型 vs. 多言語非対応型
  • 分類軸 H: 汎用型 vs. 特化型

ウェブの普及率・利用時間が上がるにつれて CMS 市場は拡大し CMS の種類は増え続けています。 そのような背景の中、 CMS は 1 つの軸で単純に「 A か B か」と分類するよりも複数の軸を組み合わせて分類して把握するのが適切です。

冒頭にも述べましたが、時代が変わり CMS が進化すると適切な分類軸は変わってくることでしょう。 数年後にまた改めて同じテーマで記事を書いてみたいと思います。

というわけで、 CMS の種類を認識するための分類軸についてでした。 ご参考になれば幸いです :)

(メリット・デメリットを書いていくと記事が長くなるので今回は書きませんでしたが、またリクエスト等いただければメリット・デメリット等の記事も書いてみたいと思います)