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「 CMS 無料」で検索しても良質な情報が得られない理由

お断り: この記事はビジネス用途での CMS 利用を考えている方に向けたものです。

CMS 関連の調べもので Google で検索すると「 CMS 無料 」「 CMS 無料 おすすめ 」「 CMS 無料 2018 」といったキーワードが関連キーワードとしてサジェストされることがあります。

ウェブ制作に関わる人のほとんどがこれらの検索ワードがあまりよくないことを知っているのですが、 Google 検索のサジェストにあがってくるということは、一般には多くの方がこれらのキーワードで検索しているということなのでしょう。 私の想像では、これらのワードで検索する方は「 おすすめの無料 CMS ○選! 」「 プロが自信を持っておすすめする無料 CMS はこれだ! 」といった記事を期待しているのではないかと思いますが、はっきり言ってこれらのキーワードはよくありません。

ということで今回は 「 CMS 無料」で検索しても良質な情報が得られない理由 について説明します。

早速結論ですが、「 CMS 無料」等の検索キーワードがよくない理由は大きく 2 つあります。

  1. 業界人は CMS を「無料・有料」の軸で分類していないから
  2. CMS 選びには「無料・有料」の軸にあまり価値が無いから

1. 業界人は CMS を「無料・有料」の軸で分類していないから

一般の方が CMS を「無料か有料か」という軸で分類するのに対し、少し知識のある方や業界の人たちは次の軸を使っています。

  • A) オープンソース CMS
  • B) プロプライエタリ CMS

「オープンソース」というのはソフトウェア一般の用語で、かんたんに言うと「 ソースコードが公開されていて、誰でも自由に入手・利用・改変できるソフトウェア 」のことです。 細かく言うとオープンソースにもさまざまな種類がありますがここでその説明はしません。

オープンソースのソフトウェアは誰でも入手できるため結果として無料になるのですが、「無料」が主なのではなく「オープンソース」が主で「無料」はその結果のひとつであるということが実は重要なポイントです。

ですので、 「 CMS 無料」ではなく「 CMS オープンソース」というキーワードで探した方がだんぜんよい情報を得ることができます

ちなみに、もう一方の「プロプライエタリ」( proprietary )は「所有権のある」「私有の」といった意味合いのことばで、ソフトウェアに対して使うときは一般に、企業が開発しソースコードを社外に公開していないソフトウェアのことを指します。 プロプライエタリは日本語ではよく「商用」と訳されたりしますが、これは誤解を生むため適切ではありません。 「商用」と言われるとその対義語は「非商用」なはずですが、オープンソースは「非商用」という意味ではありません。 どうしても日本語に訳したいのであれば、「商用」ではなく「企業製」といったことばを使うべきだと思います。

オープンソースとプロプライエタリは厳密な意味では対義語ではありませんが、 CMS は「オープンソースかプロプライエタリか」という軸でよく分類されます。

2. CMS 選びには「無料・有料」の軸にあまり価値が無いから

「 CMS 無料」という検索ワードがよくない理由がもう 1 つあり、それは CMS 選びにおいては「無料かどうか」というポイントがあまり価値が無いから です。

一般にビジネスにおいて資材の調達コストは安ければ安いほどよいので、 CMS も無料のものがあるならそれがいちばんだと考える方もいらっしゃるでしょう。 その心理はわかりますが、それより断然 大事なのは費用対効果 です。

CMS がたとえ無料でも、その導入には必ず一定のコストがかかります。 自社のリソースだけで導入する場合は学習コストや教育コストがかかりますし、社外のリソース――制作会社やコンサルタントに協力を求める場合は導入やトレーニングのコストがかかります。 いずれにせよ一定のコストがかかることは避けられません。

1 本 1 億円といった水準の CMS の場合はまた話が別かもしれませんが、一般には、この世の大多数の CMS 導入プロジェクトにおいて最も高くつくのは人件費です。 CMS そのものにかかるコストは全体のコストから見れば高々知れています 。 ですので、その CMS が無料であることを理由に CMS を選んではいけません。

プロプライエタリ CMS の肩を持つわけではありませんが、ビジネスで CMS を利用するときに重要なのは CMS が無料かどうかではなく全体で見たときの費用対効果です。 別記事 でも述べていますが、 CMS というのはウェブプロジェクトの構成要素のほんの一部であり、重要な CSF (成否を左右する要因)は CMS 以外にたくさんあります。

ということで、 2 つの意味において「 CMS 無料」という検索ワードでの検索はあまりよいものではありません、というお話でした。 ご参考になれば幸いです。

「 CMS 無料」で検索してこの記事にたどり着いた方は、「 CMS オープンソース」等で早速検索し直してみてください :D