Dyno

CMS シェアの推移と予測( 2019 年版)

2019/03/06

世界中のウェブサイトのうちおよそ 2 つに 1 つが CMS を利用していると言われています。 そんな「ウェブの 1/2 」とも言える CMS について、 2019 年時点におけるシェアの 過去の推移今後の予測 についてかんたんにまとめてみました。 どの CMS を利用するか検討している方の参考材料になればと思います。

今回ご紹介するようなマクロの統計情報を押さえておけば、個人の経験に基づいた「これからは ○○ ( CMS 名)が来る」「 ○○ ( CMS 名)の時代は終わり」といった個別の意見に惑わされることなく、ニュートラルな視点からよりよい CMS 選択ができる可能性が上がることでしょう。

過去の推移

早速ファクトを見てみましょう。 ここでもよく取り上げる W3Techs というサイトが 2010 年以降の CMS の年次のシェアを公開しています。 W3Techs によると 2010 年から 2019 年までの CMS のシェア上位はおおよそ次のようになっています。

CMS トレンド 2010 〜 2019 年

ここの情報は完璧ではないかもしれませんがある程度信憑性の高いものとして受け取めてよいでしょう。

以下注目すべきポイントです。

2010 年に上位にいた CMS は一貫して右肩下がり

2010 年に上位にいた CMS (「旧世代 CMS 」)はいずれも一貫して年々シェアを落としています。 2010 年から 2019 年への変化を見ると、 2 位の Joomla! は 12% → 5.4% (▲ 6.6% )、 3 位の Drupal は同 7.1% → 3.5% (▲ 3.6% )、その下の TYPO3 は同 4.2% → 1.2% (▲ 3.0% )となっています。 上の引用部分には載っていませんが、 2010 年に 3 位に位置していた vBulletin は同 8.4% → 0.3% (▲ 8.1% )と大幅ダウンとなっています。 いずれの CMS も 10 年弱の間に 50% 以上のダウンです。

ただし WordPress だけは例外

ただし、唯一の例外が 2010 年すでに 1 位の座にあった WordPress です。 WordPress は 51.0% → 59.7% と、もともと高かったシェアをさらにあげる結果となっています。 2014 年以降は伸びが止まり横ばいとなっていますが、一転してシェアを下げるところまでは至っていません。 WordPress 以外の旧世代 CMS が軒並みシェアを下げていることを考えると、この WordPress の状況は非常に特殊です。 シェアの面ではまさに一人勝ちと言ってよいでしょう。

WordPress ・ Joomla! ・ Drupal は上位で維持

WordPress 以外のところで言うと、 Joomla! と Drupal は年々シェアを下げていますが、 2010 年でも 2019 年でも変わらず上位に位置しています。 ちなみに、 WordPress ・ Joomla! ・ Drupal の 3 CMS は、いずれも 2000 〜 2005 年の間に誕生した PHP ベースのオープンソース CMS です。

SaaS 系 CMS が急速に伸び

旧世代 CMS がシェアを落としている分逆に伸びているものが何かと言うと、ひとつは SaaS 系の CMS です。 代表的なものは Squarespace 、 Wix 、 Weebly です。 いずれも 2010 年以降に誕生した CMS (「新世代 CMS 」)で、利用者が自分でインストール・セットアップするのではなく SaaS 型のウェブサービスとして利用するタイプです。 サーバやドメイン等の知識がなくてもかんたんに立ち上げることができ、ページ作りも GUI を使って直感的に行うことができます。 Blogger や livedoor ブログ等の既存のブログサービスをウェブサイトに拡張したものと言えるでしょう。

EC 系 CMS も急速に伸び

もうひとつシェアを大きく伸ばしているカテゴリが EC (通販)系の CMS です。 代表的なものは Shopify 、 Magento です。 日本だとこれらは「カートシステム」「通販システム」と呼ばれることが多いですが、英語圏では広い意味で CMS のカテゴリに入れられることが多い気がします。 中でも特に Shopify の伸びは著しく、 2014 年に誕生してからわずか 5 年で第 4 位となる 2.7% というところまでシェアを伸ばしています。

今後の予測

つづいて今後の予測です。 マクロ環境の大きな変化や画期的な CMS の登場等が無ければ、直近のトレンドがしばらく続くと考えるのが自然でしょう。

上位 3 位が入れ替わる

2011 年から 2019 年までの 8 年間、上位 3 つは固定で WordPress 、 Joomla! 、 Drupal でしたが、それが間もなく変わると予想されます。 Drupal はほぼ間違いなく 1 〜 2 年のうちに Shopify ・ Squarespace に抜かれ、続けて Joomla! も数年以内に抜かれる可能性が高いと言えるでしょう。

旧:

  1. WordPress
  2. Joomla!
  3. Drupal

新:

  1. WordPress
  2. Squarespace?
  3. Shopify? Wix?

トップ WordPress は変わらず

ただ、 WordPress の位置は変わりません。 2010 年以前も含めると 10 年以上もの長きにわたりトップに位置し続ける WordPress のシェアは圧倒的で、今後数年のうちに他の CMS にその座を譲る可能性はまず無さそうです。

SaaS 系・ EC 系の CMS が伸び

昨今のウェブの進化の方向性を考えると、 SaaS サービス全般と EC の取引量が引き続き堅調に伸びていくことは確実です。 そのため CMS の世界でも SaaS 系・ EC 系の CMS が伸びるのは間違いなさそうです。

オープンソース・プロプライエタリは両方残る

シェア上位のトレンドを見ると旧世代のオープンソース CMS はシェアを落とし続けていますが、シェアの低いところも見ると、オープンソースの CMS が減ってプロプライエタリの CMS が伸びているというわけでは必ずしもなさそうです。 オープンソース CMS でシェアを伸ばしているものもあります。 オープンソースとプロプライエタリはそれぞれにメリット・デメリットがあるので、このバランスが短期のうちに急激に傾くようなことはなさそうです。

コメント

私が CMS の世界を知った頃から CMS のトップシェアは変わらず WordPress 、 Joomla! 、 Drupal でしたが、これが早ければ今年、遅くとも数年以内に変わろうとしています。 Joomla! と Drupal にかぎらず WordPress 以外の旧世代 CMS は軒並みシェアを落としていましたが、いよいよトップ 3 が変わるということで、 2019 年〜は CMS の世代交代 の時期になると言ってよいかもしれません。

一昔前ウェブといえば世間一般の印象では「広告の延長」だったのではないかと思いますが、近年は広告の範囲にとどまらずさまざまなビジネス活動をウェブ上で展開する企業が増えてきました。 この流れは 2020 年以降さらに加速することでしょう。 その流れを受けて、 CMS にはかつての「コンテンツ配信プラットフォーム」としての役割から「双方向・リアルタイムのコミュニケーションプラットフォーム」「取引プラットフォーム」としての役割まで期待されるようになってきています。 上のグラフを見ると、このあたりのことが数字として如実に現れている感じがします。

というわけで、今回のお話はこれでおしまい、なのですが、最後に CMS 選びについて少し補足しておきます。

今回は CMS のシェアの推移・予測について説明しましたが、 CMS 選びにおいて重要なことは世間のトレンドに合わせることではなく自社のニーズに合致したより高い価値を生めるものを選ぶことです。 そのため、 シェアを伸ばしている CMS を選ぶことが即ポジティブで、シェアを落としている CMS を選ぶことが即ネガティブというわけでは決してありません

それはもちろんそうなのですが、マクロの視点で大きな世の中の流れを押さえておくことで、個人の経験と観測からだけでは知ることのできないチャンスとリスクを把握できるというメリットがあります。 通常ビジネス用途の CMS は一度選べば 3 〜 7 年の長期にわたり利用し続けるものなので、潤沢な予算が無いかぎり、そうコロコロと変えるわけにいきません。 そのため、 CMS 選びにおいては先々のことも見据えてマクロな情報も押さえた上で意思決定を行うのがよい ものと思います。

ご参考になれば幸いです。

(とはいえ、過去記事でも述べているとおり、ウェブプロジェクトにおいては CMS 選択よりも大切なことがいくつもあります)

2019 年時点での CMS シェアの過去の推移と今後の予測、というお話でした。