ウェブ制作会社は近隣の会社から探すべきか
今回はウェブ制作の発注において 近隣の会社に限定して制作会社探しを行うべきか否か ということについて考えを述べてみたいと思います。
近年は日本でも少しずつテレワーク(=リモートワーク)が普及してきているそうです。 総務省の情報によると、 2014 年前後の統計でテレワークを導入している企業の割合は
- アメリカ 85%
- イギリス 38.2%
- ドイツ 21.9%
- フランス 14.0%
- 日本 11.5%
出典: テレワーク情報サイト
ほどとなっているとのこと。 アメリカが 80% 以上と突出していますが、ヨーロッパ先進国も軒並み日本よりも高くなっており、今後日本でもテレワークの普及がさらに進むことはまず間違いないでしょう。
ウェブ制作においても、かつては「同じ地域の企業」か「首都圏の企業」に声をかけることが一般的でしたが、近年はこのあたりが変わってきて、わざわざ遠方の(別の地方の)ウェブ制作会社に依頼する、ということも増えて来ている感じがします。 ロゴデザイン等の単発で比較的低額の仕事では遠方の企業や個人に依頼するということが 10 年近く前から一般的になってきましたが、最近はそれが少し大がかりなウェブ制作にも広がってきています。
では、ウェブ制作の発注においては、近隣の会社に絞って依頼すべきか、それとも、遠方の会社も候補に含めるべきか、どちらなのでしょうか。 それぞれのメリットを見比べてみましょう。
遠方の会社を候補に含める場合のメリット
メリット 1: 選択肢が増える
選択肢が大幅に増える ――これが遠方の制作会社に依頼することの最大のメリットです。 地方の場合は特に、近隣の会社から選ぼうとするとそもそも数社ほどしか候補が無いということもよくあります。 その中からさらに会社の相性や品質等を考慮して絞り込むと、選択肢が 1 つあるか無いか、となる場合も稀ではありません。 最悪選択肢が無い場合はそもそも発注を行うことができません。
加えて、「選択肢の数」は交渉力に直接影響する意味でも大変重要です。 「相手には自社以外に選択肢が無いんだ」と知った制作会社の中には交渉力を逆手に取って法外に高い金額を出してくるようなところもあるでしょう。 取り引きが始まった後も他に選択肢が無い場合にはさまざまなリスクを抱える可能性があります。
ですので、選択肢が増えるということはそれだけで大きなメリットです。
メリット 2: 品質と価格のレンジが広がる
数としての選択肢が増えることと少し重なりますが 品質と価格のレンジが広がる というのも、近隣にかぎらずに制作会社を探す場合のメリットです。
例えば、トライアルで小さく事業を始めたいような場合は最初から大きな投資をすべきではありません。 その場合には、品質は少し物足りないかもしれないけれど価格が安めな制作会社に頼むとよいでしょう。 投資をするのに十分な売上・利益が得られる見通しが得られた時点で改めて予算を組み直しても遅くはありません。
逆に、潤沢な予算がありスピード重視で進めたいような場合は、価格は少し高めでも品質・スピードの高い制作会社に頼むべきです。
近隣だけで制作会社を探した場合には得られない選択肢の幅がある――これも遠方の会社も候補に含めた場合のメリットです。
ただし、ウェブ制作会社は日本国内だけでも無数にあるので、すべての選択肢を探し出し、そのすべてを正確に比較し検討することは困難です。 調査時間等のリソースにも限りがありますし、現実問題としては、近隣に限定した場合に比べて数百倍・数千倍の規模で選択肢が広がるわけではありません。 高々数倍、多くても数十倍程度にまで広がる というのが正しい認識でしょう。
近隣の会社に絞り込んだ場合のメリット
メリット 1: 顔をあわせて話ができる
最大のメリットは何と言っても 顔をあわせて話ができる ということです。 これには 2 つの意味合いがあります。 ひとつめは、契約前の比較検討の際に 人となりや価値観を見やすい ことです。 最近は Skype や Hangouts 、 Zoom 等を使ってかんたんにテレビ会議ができますが、テレビ会議と実際に会うのとはでなかなか同じようには行きません。 テレビ会議だと、話をしていないときの所作や表情を見たりざっくばらんとした雑談をしたり、といったことがなかなか難しいものです。 そのため、「金額や品質だけでなく担当者の人となりや会社の文化等も見て取引先を選びたい」という場合は特に、遠方の制作会社を選ぶ際には一定の限界があるということは認識しておくべきです。
もうひとつは、実際に契約をして制作に入ったときに 対面で対話・議論ができる ということです。 これは実際にリモートワークを経験したことのある方であればご存知のとおり、対面でできる議論とリモートでできる議論には違いがあります。 双方が十分に経験があり慣れている場合はリモートでもほとんど問題が無いこともありますが、世間的にはまだまだリモートでのやりとりに慣れていない方の方が多数派です。 対面でホワイトボードを使って話をすれば 5 分で済むようなお話が、デジタルツールを使ってリモートで話をすると 30 分かかる、というようなことも稀ではありません。
メリット 2: 万が一の場合に逃げられない
万が一のケースとして、制作会社がプロジェクトを放棄して放り出してしまう、といったことが起こらないわけではありません。 このようなことはウェブ制作の取引にかぎらず他社と取引をするときには一定の確率で起こりうるものです。
遠方の会社だと、何か万が一のことが起こったときに「実際に訪ねていって話をする」等の対応が取れず手が詰んでしまうことがありますが、近隣の企業に限定して発注している場合は、何かしらの対応を行うことができます。 万が一の場合に起こりうるリスク対策として、制作会社が音信不通になったりしたときの対応等も、遠方の会社に依頼する場合は特によく考えておかなくてはなりません。
というわけで、それぞれにメリット・デメリットがあります。 デメリットはそれぞれの裏返しです。 「遠方の会社を候補に含める場合」は「顔をあわせて話ができない」「万が一の場合に逃げられる可能性がある」というのがデメリットで、「近隣の会社に絞り込んだ場合」は「選択肢が少ない」「品質と価格のレンジが狭い」というのがデメリットです。
まとめ
私は遠方からもお仕事をお受けしているので、ポジショントークとしては「遠方の方がいい」ということになりますが、遠方の会社に頼むことにもそれなりのデメリットがあります。 実際に遠方の会社に依頼して発生したトラブルの噂も耳にするので、結局は一長一短あるということで、 自社や担当者の状況に応じてよりよい方を選ぶ というのがよいのではないかと思います。
ただし、もし「遠方の会社に依頼したことがない」「遠方の会社に頼むという選択肢を考えたことがない」というのであれば、今はテレワーク・リモートワークがしやすい環境が十分に整ってきています。 そして、時代はテレワークの方に進んでいるということもありますので、制作会社に依頼する機会が次あったときには、ぜひ遠方の会社も候補に含めてみていただければと思います。 遠方の制作会社と取引をして初めて近隣の制作会社のメリット等がわかる、ということもあります。
ぜひ制作会社探しのご参考にしてみてください。