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ウェブ制作において発注者側で最低限やっておくべきこと

今回は ウェブ制作の受発注において発注者側が最低限行うべきこと についてお話してみたいと思います。

ウェブ制作のプロジェクトの成功率を高めるために発注者側ができることは無数にありますが、今回はその中でもプロジェクトの土台ともいえるもので、もしできていなければ「これができていないって、そもそもどうなの?本当に成功させる気あるの?」と制作会社のスタッフが思ってしまう、そんなポイントをご紹介します。

その 1: 上位目的の明文化

ビジネスとして行うウェブ活用・ウェブ制作には必ず目的があるはずです。 そして、その目的にはビジネス環境分析や事業ビジョンにひもづいた「 上位の目的 」があるはずです。

通常ウェブ制作会社の仕事は、発注者の「やりたいこと」がまず先にあって、それに対してウェブ上での実現方法を考えたり具体的な実現ステップをサポートしたりすることです。 そのときに、上位目的と背景が明確になっていれば、「今はこういう話になっていますが、もっとこういうよいアプローチがありますよ」といったプラスの提案を制作会社は行うことができますが、上位目的が不明瞭なままにとりあえず「ウェブサイトを作ろう」という話になると制作会社には「発注者が求めることをただこなす」以上のアクションが取れなくなります。

プロジェクトが始まってから制作会社が率先してこのあたりのところの明文化をサポートしてくれることもありますが、その場合でも最終的に答えを出すのは発注者の仕事です。 制作会社はそのあたりをサポートすることはできますが、発注者の代わりに目的を設定できるわけではありません。

その 2: CSF の明文化

加えて、上位目的を達成するための「押さえるべきポイント」――いわゆる「 CSF 」( Critical Success Factor: 成功を左右する重要なポイント)の明文化も、発注者が率先して行うべき仕事です。

一般に、上位の目的を明確にした後でも、それを達成するために行える施策の選択肢は無数にあります。 数ある選択肢の中でどれを選ぶかはプロジェクトが進めば遅かれ早かれ決める必要がありますが、その決定の主導権は(少なくともプロジェクトを成功させたい意思があるのであれば)発注者が持つべきです。

このあたりについてよく発注者側の方は「まずどんな選択肢があるのかを制作会社に洗い出してもらってから検討したい」と考えますが、一般に、取りうる選択肢の数は発注者が考えるよりもずっと多いものです。 そのため、 CSF の提示なく「とりあえず選択肢を教えてほしい」というリクエストに応えるのは発注者が想像する以上に大変です。 たとえるなら、「ウェブで〇〇がしたいので、その選択肢を洗い出して」と言われることは「東京から大阪に行く方法をとりあえず洗い出して」と言われるのに近いものがあります。 それで選択肢を洗い出せないわけではありませんが、「移動時間は 4 時間以内で」「明日行ける方法で」等といった条件が必ずあるはずで、そのあたりをきちんと提示されるのと提示されないのとでは全然違います。

事前に CSF を明確にしておくことで、各選択肢の表面的な魅力や担当者の個人的な趣味に引っ張られず、正しい意思決定ができる確率はぐっと高まります。 明文化する過程の中で得られる気づきにも無視できない価値があるので、上位の目的と CSF はまず発注者側で明確にしプロジェクトチーム内で認識の統一をはかっておくのがよいでしょう。

実際にプロジェクトが始まっていないわけですから、 100% 間違いのない CSF を出すことは難しいでしょう。 しかし、「難しい」ことと「できない」ことは一緒ではありません。 仮説ベースでかまわないので CSF はできるかぎり洗い出すようにしましょう。

その 3: 経済性分析

これは改めて言うまでも無いことかもしれませんが、できていないことも多いのであえてあげてたいと思います。 もうひとつ発注者がやるべきことに「 経済性分析 」があります。 つまり「収支計画」です。

ウェブ制作は投資です。 特に新しいサイトを構築する際は、最初に多めのコストがかかります。 そこで出ていくコストを「いつ・どのように回収するのか」を必ず考えておきましょう。

逆に、そのウェブ制作を行うことでどのような経済的メリットがあるのか、あるいは経済面以外のメリットがあるのか。 それを考えることで、ウェブ制作にどのぐらいのコストがかけられるのかを逆算します。 コストと言うよりも正確には「投資」です。

発注者側の方の多くは、事前の経済性分析・収支計画を一切立てずに「とりあえず」で制作会社に声をかけてしまいます。 その場合、まず制作会社から見積もりをもらい、その見積もりを元に計画や予算を立てることになりますが、それでは、見積もりをもとに決裁を通すためにただ辻褄の合う計画を立ててしまうことになります。

ウェブ制作との接点がこれまでに一切なければコスト感・予算感がまったくわからず計画も立てられないということがもしかしたらあるかもしれませんが、その場合でも一定の計画は立てられずはずです。 もしその収支計画がまったく立てられないほど知識・経験が不足しているのであれば、ウェブ制作の成否はかなり制作会社の腕次第になってしまう可能性がかなり高いと言えるでしょう。 その場合に「言われたものをただ作る」タイプの制作会社に声をかけてしまうと、十中八九失敗するでしょう。 その場合は、計画立案のところからサポートしてくれるコンサルタントなり外部の協力者なりに協力を仰ぐべきです(ただし、その場合も、,コンサルタントの言うことを鵜呑みにして、コンサルタントの言うがままに仕事をしてはいけません。自社で何らかの形で検証をするようにしましょう)。

その 4: 受け入れ条件の決定

発注者が必ず行うべきことがもうひとつあります。 それは、ウェブ制作の成果物が完成し、最後に検収を行うときの「 受け入れ条件の決定 」です。

最終的に何が受け取れると OK なのか、プロジェクトが完了したみなせるのかが明確にできれば、発注者・制作会社双方のゴールが具体的に見えてきます。 それは制作会社の仕事を楽にするだけでなく、発注者自身の仕事も楽にしてくれます。

このあたりはつい「実際にモノが出てくるまではわからないし・・・」と考え後回しにしてしまいがちですが、「上位目的」と「目的」「 CSF 」等が確定できれば、そこから論理的に導き出せる受け入れ条件はたくさんあるので、そのあたりを洗い出しておくだけでも価値があります。

多くの場合ウェブプロジェクトで重要なのはサイトが完成した後の「運用」ですが、そもそもサイトが必要な特徴・機能を満たせていないと適切な運用をすることもできません。 必要な部分が間違いなく実装されて間違いなく動き、適切な運用をしていけることを確実にするためにプロジェクトのなるべく早い段階で受け入れ条件を決めておきましょう。

その 1 〜 3 のポイントはプロジェクトが始まる前の制作会社に声をかける前に、その 4 はプロジェクトの概要・成果物が固まってきた後のなるべく早期に詰めておくのがよいと思います。

おわりに

ただ、実は、このあたりがなぁなぁのままでもウェブ制作を制作会社に発注しプロジェクトを進めることはできます。 私自身そういうプロジェクトをたくさん見てきました。

しかし、そのようなプロジェクトでは制作会社への依存度が高く、プロジェクトの成否は制作会社の担当者の腕次第となってしまいます。

ウェブ制作に多額のコストをかけたとしても、制作の仕事として依頼をするかぎり、制作会社の仕事はあくまで発注者をサポートするところまでです。 プロジェクト全体の成功とその先にある上位目的の達成を制作会社が確約してくれるわけではありません。 それは制作会社がディレクションを行ってくれる場合でも例外ではありません。 ウェブ制作を通じて目的を達成しその先にあるビジネスの成功をもたらせるかどうかは、ひとえに発注者の意思と行動にかかっています。

その事実を考えると、これらのタスクを放棄し制作会社に任せてしまうことががどれだけ危険なことなのかはご理解いただけると思います。 制作会社やコンサルタントのサポートを得るにしても、主導権と責任は常に発注者側にあるという心構えでもってプロジェクトに取り組むことが大切です。 そして、主導権と責任がある者として、上の 4 つのポイントは最低限主体的に決めておくべきです。

というわけで、 ウェブ制作において発注者側で最低限やっておくべきこと についてのお話でした。

まず、社外の人を巻き込むので、上位目的と CSF をはっきりと示すこと。 そして、投資の考えをもって、きちんと経済性に関しての仮説を立てること。 加えて、プロジェクトメンバーが目指すゴールである検収の条件を考えておくこと。 ウェブ制作の受発注においてこのあたりは発注者側が必ずやる必要ああるものとして覚えておいていただければと思います。

ご参考になれば幸いです :)