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ウェブ制作会社との価格交渉でやってはいけないこと

今回は ウェブ制作の価格交渉において依頼主側がやってはいけないこと をご紹介します。 下請法等の関連法規を守るのは大前提なので、今回はそのあたりについて言及しません。

早速結論ですが、制作会社との価格交渉の際は サービス内容そのままでの値引き要求 をやってはいけません。

理由が 2 つあります。

  • 理由 1. 人的サービスだから
  • 理由 2. よい ICT 人材が不足しているから

理由 1. 人的サービスだから

第一に、 ウェブ制作というのは大部分が人的サービス です。 人件費が大部分を占めるサービスにおいて内容そのままで値引きを求めるということは 「あなたのサービスには価格に見合った価値がありません」と言うのと同じ です。

何らかの事情で制作会社がその仕事を断れないケースは除くとして、通常、サービス内容そのままでの値引き要求は非合理的です。 そんな値引きを求めると、一定のレベル以上の制作会社のスタッフは必ず「 この依頼主、ウェブ制作ってものをわかってないなぁ 」と思います。 そして、「わかっていない依頼主」に対する制作会社の対応は「理解のある依頼主」とはまったく違ったものになります。 「わかっていない依頼主」という認識を一度持たれてしまうと、その認識はかんたんに変えられるものではありません。

また、仮に内容そのままでの値引きが受け入れられても制作会社が行う仕事の品質は必ず下がります。 これはある程度合理的な判断ができる制作会社であれば当然の反応です。 品質はそのままで値引きだけしてしまうと、収益性の悪いプロジェクトになり、下手をすると赤字にもなりかねません。 値引き分に合うようにどうにかしてかける時間を減らそうとします。 時間を減らすとその分品質が下がります。 結果として、値引きした分だけ品質は下がり、仕事ぶりは値段相応になります。 値引き分だけ依頼主が得をするなんてことはありえません

仮に制作会社がサービス内容も品質もそのままで金額だけ下げるようなことがあるとすれば、それはその会社が合理的判断ができないか、社員に負担を押し付けるブラック企業かです。 もしそんな価格交渉がうまく行ってしまうならそれこそよい兆候ではありません。 そこで得られた短期的な利益は中長期的にはなくなりますし、そのような制作会社に依頼するとかえって損をするケースも多いでしょう。

理由 2. よい ICT 人材が不足しているから

ふたつめの理由は よい ICT 人材が不足している からです。 近年は特に ICT の需要が供給を上回った状態が慢性的に続いており、当面解消される見込みは無いと言われています。 市場全体でも不足していますが、重要なのは よい ICT 人材 が不足しているという点です。

ウェブ制作は「誰がやっても同じ単純作業」ではありません 。 ウェブ制作の仕事は、成果物が法律で定められていることもなければ、一定のレベルを保証する国家資格があるわけでもありません(国家試験である「情報処理技術者試験」はありますが、ウェブ業界では持っていない人の方が多いでしょう)。 まったく同じ依頼をしても、納品物の内容や品質は会社によって大きく変わります。 どの制作会社にお願いするのかによって、ウェブサイトから生み出せる価値は 1 〜 10 倍ほどの差が出てきます

そのような環境の中で、サービス内容そのままでの値引きを要求すると、腕のよい制作会社には「であればこちらからお断りします」と取引自体を拒絶されてしまう可能性もあります。 また、拒絶はされなくても「わかっていない依頼主」認定をされる可能性が高いので、たとえ無事に取引ができてもベストな仕事を期待することは難しくなります。

ですので、「ここにお願いしたい」と思う制作会社をもし見つけたら、多少の金額の多寡を気にして無理な値引き交渉をするよりも、良好な関係を維持しておくことに注力した方がよいと思います。

といった理由により、サービス内容そのままでの値引き要求は NG です。

ただし、いくつか例外があります。 例えば、制作会社がバッファをたくさん載せて金額を提示していると明らかな場合は、そのまま鵜呑みにするのではなく、内訳の確認や交渉を行うべきです。 また、提示された金額が予算と合わず、その金額だとどうしても依頼ができない場合は、内容や品質の見直しとあわせて率直に「相談」するのがよいでしょう。

というわけで、ウェブ制作会社との価格交渉でやってはいけないことについてでした。 ご参考になれば幸いです。