Dyno

ウェブサイトの目的の考え方

まったくやるべきでないことを高い効率でやることほどムダなことはない。

― ピーター・ドラッカー

今回は ウェブサイト(≒ホームページ)構築のプロジェクトにおける目的に考え方 について述べてみます。 前置きなしで早速本題に入ります。

目的なあいまいなプロジェクトは失敗する

考えてみれば当たり前のことですが、目的があいまいなプロジェクトは高い確率で失敗します。 ウェブプロジェクトも例外ではありません。

目的があいまいだと、プロジェクトが進むうちに押さえるべきポイントがうやむやになり、何がウリなのか何のためのものなのかよくわからないサイトができてしまいます。 また、そもそも成功したかどうかを判断することが難しいため、一定の成果を出しても「成功した」と言うことができません。

ただしこれにはひとつ例外があります。 それは「結果を客観的にレビューしない場合」です。 例えば、ワンマン社長の中小企業ではこのタイプのプロジェクトがよく発生して、社長が関わった瞬間にプロジェクトに失敗がありえない(どんな結果でも失敗とは誰も言えない)ことになったりします。 他人事であればこれは笑い事ですが、自分が勤めている会社がこれだと笑い事じゃないですよね。 この例外は議論するに値しないので今回の議論では考えません。

話を戻します。 目的のあいまいなウェブプロジェクトはほぼ必ず失敗します。 ということは、ウェブプロジェクトを成功させたければ、まず最初にやるべきことは「適切な目的の設定」です。 とはいえ、目的の設定がかんたんなことは稀でしょう。 適切な目的を設定するにはどうすればよいのでしょうか。

ウェブプロジェクトの目的は最上位から考える

結論としては、適切な目的を設定するためには「 最上位の目的や戦略をブレークダウンする 」ことが大切です。 これに尽きます。

ここで、最上位の目的や戦略とは、事業がひとつだけの場合はその企業の、独立した事業をいくつも持つ企業の場合は個別事業の目的や戦略のことです。 つまり、理念やビジョン、短中期の事業目標です。 もうひとつ下の階層でいうと、売上や利益、市場シェアです。 とにかく、最上位の目的から導出して考える必要があります。

最上位から考えることが重要な理由は 最近のウェブではいろんなことができるから です。 今やウェブは企業の対外コミュニケーションの中心的役割を担うようになり、事業活動のあらゆる場面で使うことができます。 できることの幅が広いので、事業の目的や戦略へのインパクトが小さいことも無数にできてしまいます。 だから、効果の薄いことに力を注いでしまわないために、事業のビジョンや目標に整合した正しい目的を設定しなくてはなりません。

ちょうどよい合理的なターゲット指標を選ぶ

最上位の目的や戦略をブレークダウンしたら、次にやるべきなのは「 ちょうどよいターゲット指標を選ぶ 」ことです。 ウェブサイトに関わる一連の取り組みで追いかけるのにちょうどよい、合理的なターゲット指標を選びましょう。

この作業を進めるときに便利なのは、 ロジックツリーを使った MECE な(モレとダブりのない)分解 です。 例えば「売上」を分解すると次のようになります。

  • (売上) = (サービス A の売上) + (サービス B の売上) + ...
  • (サービス A の売上) = (客単価) × (客数)
  • (客数) = (市場の人数) × (認知率) × (購入率)

ここまで分解した後で、例えば、ウェブサイトのターゲット指標を「 認知率 」に設定します。

このターゲット指標の粒度は重要です。 粗すぎる指標を選んでしまうと、いざ具体的なコンテンツや機能を決めようとしたときに選択肢の幅が広すぎてうまく決められません。 細かすぎるものを選ぶと、コンテンツや機能の幅が制限されすぎてしまい、本来有効なアクションを取れなくなります。 そのため、 最上位の目的・戦略と整合した、ちょうどよい粒度の指標を選ぶことが大切です

ちなみに、この分解の方法は無数にあるので、自社の文化や戦略に合ったものを選ぶのがよいでしょう。 例えば、大阪のテーマパーク USJ を驚異的な V 字回復に導いた森岡毅氏は著書『確率思考の戦略論』の中で、売上を左右する要因を説明するのに「プレファレンス」という概念を使っています。 また、その他に使える切り口として「バリューチェーン」や「バランススコアカード」のフレームワークがあります。 唯一絶対の分解方法は無いので、参考にできるものの中から自社にとっていちばん合うものを選ぶようにしましょう。

フレームワークを使って分解したら後はちょうどよい指標を選ぶだけなのですが、その際に注意すべきポイントが 2 つあります。

  1. フェーズの考えを持つこと
  2. 欲張りすぎないこと

「フェーズの考え方を持つ」というのは、顧客が「自社を知らない状態」から「購入した状態」になり、最終的に「リピーターになった状態」に至るまでのフェーズを分けるフレームワークで考えるということです。 一般には AIDMA や AISAS 等のフレームワークが有名ですが、このあたりも自社の状況と戦略に合ったフレームワークを選ぶのが理想です。

「欲張りすぎない」というのは字句通りそのままの意味で、目的を「あれもこれも」と欲張らないことです。 多くの人はウェブプロジェクトでの目的設定のときに欲張ります。 競合のいない独占市場であれば別ですが、ほとんどのビジネスには競合がいます。 その状況の中で 1 つの施策で複数の目的を達成しようと欲張るのは逆に効果を薄めてしまうことになります。 ボトルネックを特定して明確に優先順位を付けてやるべきことを絞り込みましょう。

以上ウェブサイトの目的の設定方法についてでした。

ウェブサイトの「目的」と「種類」の例

概念のお話だけではわかりづらいので、ウェブサイトの目的の代表的な例をいくつかあげてみます。

分類の切り口として私が好きなのは、シンプルで MECE な「 売上向上か費用削減か 」の軸です。 それぞれの例をいくつか見てみましょう(「目的 → 種類」という形で書いています)。

売上向上

  • 認知率の向上 → プロモーションサイト
  • ブランド好感度の向上 → 社会活動紹介サイト
  • 購入意思を持ってから購入までの経路の短縮 → EC サイト
  • 購入検討時の不安の解消 → 店舗サイト
  • リピート率の向上 → 利用者マイページ
  • 紹介率の向上 → 利用者 SNS サイト

費用削減

  • 広告費の削減 → 既存の広告代わりのサイト
  • 新規客の対応コストの削減 → ヘルプサイト
  • リピート客の対応コストの削減 → CRM サイト
  • 採用費用の削減 → リクルートサイト
  • 情報共有コストの削減 → 社内用情報サイト
  • 教育コストの削減 → 社内用情報サイト

これらはあくまでも代表的な例であり、パターンは他にも無数にあるでしょう。

...

以上です。

繰り返しですが、ウェブプロジェクトの目的設定で重要なのは、 最上位の目的や戦略との繋がりを明確にすること です。 例えば、次のような目的のウェブプロジェクトが立ち上がったとしましょう。

  • a) お問い合わせを増やしたい
  • b) 社内で情報を共有したい

これらの上位目的は明確でしょうか。 これらが達成できれば誰がどう幸せになるのでしょうか。 これだけではにわかにはわかりません。

ウェブプロジェクトの目的を考えるときは、直接の目的だけでなく、ひとつ上の目的から最上位の目的まで、チェーンのように繋がった見通しを持つことが大切です。 その見通しがなければ、たとえ直接の目的が達成できても最終的に「結局ビジネスには役立たなかったね」という評価になることもあります。 ですので、ウェブプロジェクトを立ち上げるときは、早い段階から、直接の目的から最上位の目的までのチェーンを明確に描いておかなくてはなりません。

私見ですが、この最上位の目的までのチェーンを描くことはいちウェブ担当者ではなく経営者やマネージャの最低限の仕事です。 これらができないのであれば、部下が進めたウェブプロジェクトがたとえ思うような成果をあげなくても後出しであれこれ批評する資格はありません。 いち担当者に押し付けずぜひプロジェクトの早い段階で必ず行っておきましょう。

以上、ウェブサイト構築プロジェクトの目的の考え方についてでした。 ウェブプロジェクトを目的のところから考える必要に迫られた経営者や担当者の方にぜひ参考にしていただければと思います :)