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ウェブサイトの目的の考え方

今回は ビジネスでサイトを構築・運用するときの目的の考え方 をご紹介します。

※本記事の対象は、ウェブ制作を自社で行っていない中小企業や個人事業の方です

新しいサイトの構築や既存のサイトのリニューアルを企画するときには、社内向けの提案資料や制作会社向けの RFP / RFQ を作る必要が出てくる場合が多いかと思います。 そのときに一番重要な目的がうまく考えられないというときに参考にしてみてください。

※以下「ウェブサイト」「 web サイト」「ホームページ」をまとめて「サイト」と表記します

サイトの目的を考えるときに便利なフレームワーク

サイトの目的を考えるときには ビジネス分析やマーケティングの定番フレームワークを使う のがおすすめです。 定番のフレームワークを使うことで次のようなメリットが得られます。

  • ベースの考え方についての認識合わせの労力を減らし、本質的な議論に集中できる
  • 使うフレームワークが関係者間で共通用語となっていれば認識の共有や議論の効率が上がる

以下、サイトの目的を考える上で便利なフレームワークをひとつずつご紹介します。

  1. 5W1H
  2. 広告効果の階層モデル
  3. 戦略ヒエラルキー
  4. バリューチェーン
  5. 3C
  6. PEST

1. 5W1H

5W1H は、日本人にはおなじみの「いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように」のフレームワークです。

サイトの目的設定の文脈ではそのすべてを利用する必要はなく、使いやすいところだけを部分的に利用すれば OK です。 これらの中で特に重要なのは WHO と WHAT です。 つまり、 誰に何を提供するためのサイトなのか という視点です。

具体的には次のような問いに答える形で目的を考えます。

  • サイトのメインターゲットは誰か?
  • サイトのメインターゲット以外のステークホルダーは誰か?
  • サイトを通してどんな便益・メリットを提供するのか?
  • サイトを通してどんな問題・悩みを解決するのか?

2. 広告効果の階層モデル

広告効果の階層モデル というのは、 AIDA や ACCA/DAGMAR に代表されるユーザーのプロセスモデルのことです。 日本では広告代理店が広めた AIDMA や AISAS のモデルが有名です。

日本語では「態度変容モデル」と呼ばれたりしますが、オリジナルの英語では hierarchical models ・ hierarchy of effects models (階層モデル)や purchase funnel (購買ファネル)という呼び方の方が一般的のようです。

要は、顧客が自社の製品やサービスについて何も知らない状態から買ってもらえる状態に至るまでの一連のプロセスを顧客の視点に立って分解し、「知る→欲しくなる→買う」の流れを促進するときに利用するフレームワークです。

ちなみに、 AIDA と ACCA はそれぞれ次の単語の頭文字です。

  • AIDA: Attention (認知)・ Interest (興味)・ Desire (欲求)・ Action (行動)
  • ACCA: Awareness (認知)・ Comprehension (理解)・ Conviction (確信)・ Action (行動)

このフレームワークは、サイトの目的を考える文脈では次のような質問をして利用します。

  • サイトの目的・役割を考えるときの階層モデルとしては、度のモデルを使うのがよいか?
  • サイトは階層モデルのどの部分を強化する役割を担うべきか?

3. 戦略ヒエラルキー

戦略ヒエラルキー は、ビジネス活動の全体と各機能の関係を戦略のツリーという視点で俯瞰するフレームワークです。 企業全体の戦略と、個別事業の戦略、そして、小さな機能単位の戦略、と、異なる粒度でビジネス活動を把握します。 上位の戦略は下位の戦略の目的であり、下位の戦略は上位の戦略の手段である、というように、親子関係にある戦略が互いに整合した形を追求します。

一般的な粒度は次の 3 つです。

  1. 企業戦略
  2. 事業戦略
  3. 機能別戦略

サイトの目的を考えるときには次のような質問を立てて利用します。

  • 事業全体の中でサイトが担うべき役割は何か?サイトの位置づけは何か?
  • サイト戦略の上位戦略はどのようなものか?
  • サイト戦略と上位戦略に矛盾は無いか?論理的に整合しているか?

4. バリューチェーン

バリューチェーン は、一連のビジネス活動を「顧客に価値を提供するチェーン」として捉えるフレームワークです。 マーケティング・研究・開発・製造・販売・その他間接部門といった諸機能をチェーンの各輪とみなして、互いに整合しているか、価値を低減させているボトルネックはどこにあるか、という視点で分析・評価します。

戦略ヒエラルキーと切り口は似ていますが、バリューチェーンの方は焦点が戦略だけではない点、社外もスコープに含めることがある点等が異なります。

サイトの目的を考えるときには次のような質問として利用します。

  • サイトはバリューチェーンのどこに位置づけられるか?
  • サイトが強化すべきバリューチェーンのボトルネックはどこにあるか?
  • サイトの構築・リニューアルに伴って、バリューチェーン上で調整すべき箇所はあるか?

5. 3C

3C は、ビジネスの市場環境を分析・俯瞰するためのフレームワークです。 3C は Customers (顧客)・ Competitors (競合)・ Customer (自社)の 3 つの頭文字を取って 3C です。 これら 3 つの切り口を持って「競争優位性(顧客に対して自社が他社よりも高い価値を提供できるエリア)を見つける・生み出す」という観点から情報収集・分析を行います。

ちなみに、 3C の生みの親は日本人の大前研一さんだと言われています。

サイトの目的を考える文脈では、次のような形で利用します。

  • サイトのターゲットは誰か?
  • サイトのターゲットはどこにいるか?普段どんなサイトを利用しているか?
  • 競合サイトにはどのようなものがあるか?
  • (現行サイトがある場合)自社のサイトはターゲットからどのような印象を持たれているか?
  • 自社のサイトはターゲットからどのような印象を持たれたいか?

6. PEST

PEST は、ビジネスのマクロ環境を分析・俯瞰するためのフレームワークです。 PEST は Political (政治・法律)・ Economic (経済)・ Socio-cultural (社会・文化)・ Technological (科学・技術)の 4 つの頭文字を取って PEST です。 3C が競争市場・ドメインそのものを見るフレームワークであるのに対し、 PEST はもっと大きな意味での環境を分析するフレームワークです。 一般に PEST の各要素は自社にとっては uncontrorable な(コントロールできない)要素みなします。

ちなみに、 PEST には派生型が多く提唱されており、 Environmental と Legal を追加した PESTEL や、 Legal と Intercultural を追加した SPELIT 等があります。

サイトの目的を考える文脈では、次のような問いの形で利用します。

  • サイトを構築・リニューアルする上で、意識しておくべき社会の変化はあるか?
  • サイトの運用期間中に発生することがすでにわかっている、法律や技術の重大な変化はないか?
  • サイトの目的・目標の達成を阻害する、コントロール不可能なリスク要因はあるか?

……

これらのフレームワークをうまく利用すれば、合理的で納得性が高く、中長期の PDCA にも役立つ骨太な【サイトの目的】を考え出すことができます。

もちろん、必ずしもすべてのフレームワークを使う必要はありません。 企業の文化やそのときどきの状況にあわせて適材適所で使えるものを使ってみてください。

ご参考になれば幸いです。

参考: いずれも英語の Wikipedia のページです。