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「 SEO に強い CMS 」が嘘である理由

今回は巷でよく言われる「これは SEO に強い CMS です」という主張の間違いについて説明します。

最初に用語の説明をします。 この記事では以下の用語を使っています。

  • SEO: Search Engine Optimization (検索エンジン最適化)
  • CMS: Content Management System (コンテンツマネジメントシステム)

世間でなされる「この CMS は SEO に強いです」といった主張はだいたい嘘か間違いです

以下に理由を述べますが、その前に今回のお話の前提について説明します。

お話の前提

CMS は大きく「クラウドサービス型」と「インストール型」の 2 タイプに分かれます。 クラウドサービス型は名前のとおりクラウドサービスとして利用するもので、インストール型は利用者が各自でダウンロードしウェブサーバーに設置するタイプのものです。

  • クラウドサービス型の例: Jimdo / Wix / Weebly / WordPress.com
  • インストール型の例: WordPress / Joomla! / Drupal / concrete5

今回 CMS というのはインストール型の CMS のことだけを指しています。

また、 SEO には大きく分けて「ビジネスにおける SEO 」と「趣味の SEO 」があります。 ビジネスにおける SEO とは目指すべき目標があり費用対効果を重視する SEO のことで、趣味の SEO とはそのようなものとは無縁のものです。 ビジネスにおける SEO と趣味の SEO を一緒くたに語ると話が複雑になるので、今回はビジネスで行う SEO を念頭に置いてお話しします。

「 SEO に強い CMS 」が嘘である理由

以下本題です。 「この CMS は SEO に強いです」といった主張がなぜ間違いなのかを説明します。

  • 理由その 1: CMS の SEO 特性はどれもほぼ同じだから
  • 理由その 2: CMS は必要に応じて拡張ができるから
  • 理由その 3: SEO は CMS だけでは決まらないから

理由その 1: CMS の SEO 特性はどれもほぼ同じだから

理由の 1 つめは、一般によく使われるメジャーな CMS であれば SEO 上の特性はどの CMS でもほぼ同じだから です。

一定のシェアがあり継続的にメンテナンスされているメジャーな CMS であれば SEO 上の特性というのはどれもそう変わりません。 なぜなら、 CMS の世界では常に他からの学び合いが起こっており、 SEO に有効な機能が A という CMS に追加されもしそれが効果的なものならば、同様の機能がライバルであるその他の CMS にも実装されるからです。

メジャーな CMS の開発に携わっている人たちはその CMS だけしか知らないことは稀で、他の CMS のことも知っています。 そのため、たとえば「コンテンツ発信作業の効率化」「適切なマークアップの生成」「サイトマップの生成」「ページ表示速度の高速化」といった SEO に関わる標準的な機能は大体どの CMS でも実装されており、そこに決定的な差はありません。

ですので、たまに「サイトマップが自動生成できるから」「 SEO に強いプラグインがあるから」「ページ表示速度の高速化が図られているから」といった理由で特定の CMS が SEO に強いと主張する人がいますが、そのほとんどは間違いです。 そう主張する人たちの多くは、知識不足で他の CMS のことをあまりよく知らないか、知っているけれど自分の利益を優先して嘘をついているかです。

SEO に関しては Google が公式に「検索エンジン最適化( SEO )スターターガイド」という資料を公開しており、そこに定番の SEO 施策が網羅的に紹介されていますが、そこにあがっているようなポイントは大体どの CMS でも押さえることができます。 興味のある方はスターターガイドに目を通してみてください。

理由その 2: CMS は必要に応じて拡張ができるから

理由の 2 つめは 多くの CMS は必要に応じて拡張できるから です。

世界的に人気の CMS の場合、 SEO に関わる部分はプログラマやサイトビルダーが自由にカスタマイズできることが一般的です 。 そして、もうひとつ重要なことに そのようなカスタマイズには数学やコンピュータサイエンスの高度な知識は必要ありません 。 そのため、仮に利用中の CMS に該当する機能が無かったとしても、情報系の専門学校や学部で学ぶぐらいの基礎知識を持つ人が一人いれば、少し調べれば実装して追加できる場合がほとんどでしょう。

理由その 3: SEO は CMS だけでは決まらないから

3 つめの理由は SEO は CMS のレイヤーだけで決まるものではないから です。

今日 SEO は総合力で競う時代です CMS のレイヤーだけでなく、もっと下のインフラやミドルウェアも、もっと上のコンテンツや運用方法等も SEO に影響してきます 。 そのため、仮にちょっと他よりも SEO に優れた CMS があったとしても、その他のレイヤーがおろそかであれば SEO で成功することは不可能です。

今日 SEO において最も重要なのは コンテンツの品質 発信者の信頼度 です。 検索エンジンに高く評価されるページやサイトはオフラインの信頼される人や人気のお店のイメージにどんどん近づいてきています。 それを「この CMS を使えば SEO に有利です」と言うのは「この靴を履けば異性にモテますよ」と言って知識の無い人に靴を売るようなものです。

実際、適切にメンテナンスが行われているメジャーな CMS を選ぶかぎり SEO のボトルネックが CMS のレイヤーに来ることは稀で、多くはもっと上のコンテンツやさらに下のインフラのレイヤーに原因があります。 そのため、 SEO を重視するのであれば、 SEO に強い CMS を追求するよりも、総合的に SEO を行える SEO の専門家を見つけるのに時間をかけた方がよほど有意義だと思います。

まとめ

最後にかんたんにまとめます。

まず、 SEO に関係する特性はどの CMS も似通っているので、「 SEO に最強の CMS 」なんてものは存在しません。 そして、メジャーな CMS ではカスタマイズができることが一般的なので、たとえ CMS に SEO 上重要な機能が備わっていなかったとしても、ちょっとカスタマイズをすればよいだけのことです。 さらに、そもそも SEO 的なパフォーマンスというのは CMS だけで決まるものではないので、 CMS のレイヤーだけで SEO を語るのはナンセンスです。

ということで、「この CMS は SEO に強いです」という主張は大体の場合間違いですよ、というお話でした。

ちなみに、前提条件を定めない「どの CMS が SEO に強いか?」の議論にもあまり意味がありません。 それは「ナイキとアディダスとアシックス、どの靴がいちばん速いか?」を議論するのに似ています。

このあたりの議論は「どの CMS を使うか」( WHAT )よりも「どう CMS を使うか」( HOW )の方が重要だというお話にもつながります。 興味のある方は次の記事も読んでみてください。

補足

ちなみに、基本的な SEO の知識も CMS をカスタマイズできるだけの技術も、専門家に依頼できる予算も、何もかも無いという場合は、とりあえずシェアが圧倒的に高くて高品質テーマが無料または安価で手に入る WordPress を選んでおくとよいでしょう。

ご参考になれば幸いです :)