オープンソース CMS について発注者が知っておくべき 4 つのこと
今日、世界中のウェブサイトのおよそ 6 割以上で CMS が使われていると言われています。 そのうち Wordpress などのオープンソースの CMS 1 が 7 割を占めるとのことなので、単純計算で少なくとも 0.6 × 0.7 = 42% 、 およそ 2 つに 1 つのウェブサイトでオープンソース CMS が使われている と推定されます 2 。 統計的に見て、オープンソース CMS は今日のウェブサイト管理の「王道」といえます。
今回はそんなオープンソース CMS を利用するときに知っておくべき基礎知識をまとめてみました。 ある程度ウェブ制作業界で働いていれば当たり前とも言える知識ばかりですが、一般には知らない方も多いのではないかと思います。 発注者の立場になる方はぜひ覚えておいてください。
- CMS のアップデートは「義務」
- CMS は絶えず進化し続ける
- CMS の利用にはランニングコストがかかる
- オープンソースは「最安」ではない
1. CMS のアップデートは「義務」
オープンソース CMS を利用するのであれば「 CMS のアップデート」は利用者が必ず行うべき「義務」です。 これは余裕のある会社だけがやるべき「オプション」ではありません。 利用するなら必ず行うべき最低限の義務です。
既知の脆弱性を持つ古いバージョンの CMS を利用すると、世界中のクラッカーたちからクラッキングを受けて CMS が悪用される可能性があります。 CMS が悪用されたとき、サイトの所有者が損害を受ければそれで済むとはかぎりません。 サイトのホスティング会社や訪問者、ひどい場合は他のサイトの所有者にも損害を与えることがあります。
古いバージョンの CMS を使い続けることを他でたとえるなら、飲食店が「お店で利用する調理器具を店先に放置する」ようなものです。 調理器具の中には包丁のように非常に危険なものもあり、そんなものを放置すれば事故が起こる可能性、犯罪に利用される危険があります。 運が良いと事故も起こらず悪用もされませんが、万が一のことがあると大変なことになります。 ふつうの飲食店なら社会的責任として「調理器具を放置する」なんてことはしないでしょうが、古いバージョンの CMS をウェブ上で放置することにはこれと似たリスクがあります。
この意味で、「 CMS のアップデート」(発注者の立場で言うと「 CMS をアップデートしてもらうための保守費用の支払い」)は最低限の義務です。 もしそれができないのであれば、オープンソース CMS は利用するべきではありません。
2. CMS は絶えず進化し続ける
世界中で利用されている人気のオープンソース CMS は絶えず進化し続けています。 ソフトウェアやウェブの世界そのものが日々発展し続けているため、変化し続けることは「 CMS の宿命」とも言えます。
CMS にもたらされる変化の中には、いち利用者にとって望ましいものもあればそうでないものもあります。 場合によっては、当初 CMS 採用したときに選定理由になった魅力的な特徴が変化の積み重ねで数年後に失われてしまうなんてことも起こりえます。
オープンソース CMS を使うということは、そんなコントロールのできない変化を受け入れるということです。 無料で利用させてもらう代わりに、その CMS の進む方向性に身を委ねるということが必要です。
もしそれが嫌で、要望どおりの機能・特性を求めるであれば、オープンソースの CMS は使わず独自の CMS を開発する(または開発してもらう)という選択肢を選ぶべきです。
3. CMS の利用にはランニングコストがかかる
オープンソース CMS の利用には、イニシャルの構築費用に加えてランニングの保守費用がかかります。 これは、上に述べた CMS のアップデートへの対応の他に、プログラミング言語のバージョンアップやホスティング会社のサービス変更などへの対応が必要になるためです。 運が悪いとウェブサイトがサイバー攻撃の被害に遭いデータ復旧などの対応が必要になることもあり、そこには当然人手がかかります。
たまに「保守費用はいただきません」といったアピールをしている制作会社がありますが、保守作業は CMS を安全に利用しようとするかぎり必ず発生します。 ですので、そのような会社がやっていることは次の 2 つのどちらかです:
- A) 適切な保守作業を行っていない
- B) 初期の請求にランニングコスト分も含めている
ランニングコストは必ずかかります。 見かけ上の「お得感」の演出に釣られないようにしてください。
4. オープンソースは「最安」ではない
オープンソースが無料で利用できることから「オープンソースの CMS を使えばコストが抑えられるのではないか」ということで「オープンソース=最安」と考える人がいます。 オープンソースを使うとコストが抑えられる場合が多いのは事実ですが、多くの場合、オープンソースは最安な選択肢ではありません。 CMS を使わない「静的サイト」や「クラウド CMS 」であれば、オープンソース CMS よりも金額で 1 〜 2 桁低いコストでウェブサイトを運用できます。
技術やコストの面での制約が非常に厳しい場合は、無理に CMS を使ってサイトを管理するのはやめて、 Facebook や Instagram などの SNS を使うという選択肢もあります。
ということで、オープンソース CMS について発注者が最低限知っておくべきことについてでした。 WordPress などのオープンソース CMS の導入を検討している方はぜひ参考にしてみてください。