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JAMstack が普及すると WordPress はどうなるのか?

今回は JAMstack アーキテクチャが普及すると WordPress はどうなるのかというお話をしたいと思います。

「 JAMstack とは何ぞや」はここでは説明しないので、知らない方は事前に調べてみてください。 このブログでは次の記事などで説明しています。

JAMstack が普及しても WordPress の利用は減らない

「 JAMstack が普及すると WordPress はどうなるの?」という質問に対する回答のパターンは大きく 3 つあります。

  • A) 利用が減る
  • B) 変わらない
  • C) 利用が増える

A) は JAMstack が普及していくにつれて WordPress の利用が減少していくイメージです。 B) は JAMstack が普及しても WordPress には特段影響が無いイメージ、 C) は JAMstack が普及していくと逆に WordPress の利用も増えていくイメージです。

人によって意見が分かれるところだと思いますが、筆者の予想は B) か C) です。 つまり、 JAMstack が広まっても WordPress の利用はそう変わらない、あるいはむしろ増える可能性が高いと筆者は見ています。

理由は 3 つあります。

  • 理由 1. WordPress の圧倒的なシェアの高さ
  • 理由 2. JAMstack はプロ向けのニッチ手法であること
  • 理由 3. JAMstack における WordPress 利用の機会

理由 1. WordPress の圧倒的なシェアの高さ

1 つめの理由は 現在 WordPress のシェアが圧倒的に高いこと です。

WordPress は人気の高い CMS です。 そのシェアは CMS 市場の約 65% 、ウェブ全体の約 40% と言われています 1 。 2010 年にはすでにシェア 1 位でしたが、 1 位の座をキープしつつその後もじわじわとそのシェアを伸ばし続けています。 絶対数で言うと WordPress を使うサイトは数千万サイトもある状況です。

WordPress のようなオープンソース CMS は利用者が多ければ多いほど利用のメリットが増えるため(いわゆる「ネットワーク効果」が働くため)、圧倒的なシェアを持つ WordPress の周りには他の CMS には無い独特のエコシステムが形成されています。

圧倒的なシェアと大きなエコシステムを持つ WordPress の地位が JAMstack の普及で揺らぐというのは考えづらいシナリオです。

理由 2. JAMstack はプロ向けのニッチ手法であること

2 つめの理由は JAMstack がニッチであること です。

JAMstack を使ったサイトの構築・保守にはある程度の知識と技術が必要です。 特に中長期にわたって運用するとなると、「ちょっと IT に強い」ぐらいでは難しくて、それなりのプログラミングやウェブの知識が必要になります。

また、 JAMstack アーキテクチャの大きなメリットというのは、「コンテンツ管理効率」「セキュリティ」「パフォーマンス」等の面において、動的 CMS と静的サイトの「いいとこどり」ができるところにあります。

つまり、 JAMstack を利用するには、ある程度の知識と技術、そして、コンテンツ管理やセキュリティやパフォーマンスに関する高いモチベーションが必要です。 そのため、 JAMstack はプロだけが使う「ニッチ手法」の域を出ることはないと思います。

WordPress はウェブ制作のプロの間でも利用されていますが、専門的な知識を持たないライト層の人たちにも多く利用されています。 ライト層の人たちがこぞってシンプルな WordPress から複雑な JAMstack に移行する可能性は低いでしょう。

JAMstack は、ウェブ制作やプログラミングの知識を持つ人たちにとって魅力的な選択肢ですが、ウェブに詳しくない一般の人たちが気軽に選べる選択肢では決してありません。

理由 3. JAMstack における WordPress 利用の機会

3 つめの理由は JAMstack アーキテクチャの一部に WordPress が使えること です。

JAMstack アーキテクチャと WordPress は水と油のようなものと捉えている人もいるようですが、実際にはそんなことはありません。 WordPress は、管理画面と API だけを使用していわゆる「 headless CMS 」(ヘッドレス)として JAMstack アーキテクチャの一部に利用することができます 2

純粋な headless CMS に比べると headless CMS としての WordPress には物足りない部分や余計な部分がたくさんありますが、 WordPress の洗練された投稿編集 UI とメディア管理機能には大きな魅力があります。 実際にいくつもの CMS を触ればわかりますが、 WordPress の管理画面 UI に匹敵するレベルの UI を提供する headless CMS はそうそうありません。

また、 WordPress 以外のメジャーな CMS が近年軒並みシェアを落としているという点も大きなポイントです。 シェアが下がっていく CMS の採用には相応のリスクとデメリットが伴うため、いまシェア下落中の CMS を利用してきた人たちは他の CMS への移行を検討するでしょう。

そのあたりのところも含めて考えると、 JAMstack が普及すると「 WordPress から JAMstack 」への移行も起こるでしょうが、それと同じかそれ以上に「 WordPress 以外の CMS から JAMstack with WordPress 」への移行が増えていく可能性があると予想されます。

ということで、これらの理由により JAMstack が普及しても WordPress はどうにもならない と筆者は考えています。 JAMstack や WordPress に興味のある方のご参考になれば幸いです。

余談ですが、 JAMstack を推す人たちの中には WordPress を倒したり乗り越えたりすべき対象であるかのように言う人もいますが、そのような見方はあまり適切ではありません。 WordPress と JAMstack は「はさみと包丁」のように目的と状況によって使い分けるべきものですし、 WordPress は JAMstack アーキテクチャの一部として利用できる技術要素でもあります。


  1. WordPress のシェアは Market share trends for content management systems CMS technologies Web Usage Distribution で確認できます。

  2. WordPress の管理画面と API だけを利用することを decoupled WordPress (デカップルド・ワードプレス)や headless WordPress (ヘッドレス・ワードプレス)と言ったります。