長期間運用するサイトを構築するときに気をつけていること
今回は長期間運用する予定のサイトを構築するときに気をつけていることをご紹介します。 なおここで「長期間」というのは具体的に 3 〜 8 年ぐらいをイメージしています。
以下に述べるポイントを考慮してサイトを作った場合とそうでない場合とではサイトの保守性や寿命が大きく変わってきます。 これからサイトを構築して(もしくは構築を依頼して)長期間運用していくことをお考えの方はぜひ参考にしてみてください。
対象読者
- 長期間運用する予定のサイトをこれから構築しようとお考えの方
長期間運用するサイトに起こること
サイトを長期間運用し続けるとその間にさまざまな環境の変化が起こります。 たとえば……
ビジュアル:
- ビジュアルデザインのトレンドが変わる
利用環境:
- 端末の画面解像度・画面サイズが向上する
- 端末の通信速度が向上する
利用技術:
- 利用している CMS に深刻な脆弱性が見つかる
- 利用している CMS の開発状況が変わる
- 利用しているプラグインの開発状況が変わる
- 利用しているその他(フロントエンド等)のソフトウェアライブラリの開発状況が変わる
ホスティングサービス:
- 利用しているホスティングサービスが終了する
- 新しいホスティングサービスが登場する
外部サービス:
- 検索エンジンの評価ロジックが変わる
- SNS 連携に影響する API 仕様が変わる
- 主流の SNS が変わる
チーム体制:
- サイトの責任者が変わる
- コンテンツ運用の担当者が変わる
- CMS 保守の担当者が変わる
実際にどんなことが起こるかを事前に 100% 正確に予測することはできません。 しかし、過去の歴史を見るかぎり長期間サイトを運用するならほぼ確実に発生すると言えるものもこの中にはあります。 たとえば次のような事象は長期間サイトを運用していると発生する確率が非常に高いと言えます:
- ビジュアルデザインのトレンドが変わる
- 利用している CMS に深刻な脆弱性が見つかる
- 利用しているプラグインの開発状況が変わる
- 検索エンジンの評価ロジックが変わる
長期間運用する予定のサイトを構築するときは、最初からこのような事象が発生することを考慮しておくことが大切です。
長期間運用するサイトを構築するときに気をつけていること
ということで、私(後藤)が長期間運用するサイトの構築時に気をつけていることをご紹介します。
- 流行りのデザイントレンドを避ける
- CMS の守備範囲の枠に収める
- 最小限のプラグインを利用する
- 定番のプラグインだけを利用する
- 最小限のライブラリだけを利用する
- 小手先の SEO 対策を行わない
1. 流行りのデザイントレンドを避ける
短期的に盛り上がり急速に収束するような「流行りのデザイン」の採用は極力避けます。 新しいデザイントレンドには「一過性のもの」と「長く存続するもの」があるので、「一過性のもの」の方はなるべく避けて「長く存続するもの」だけを取り入れるようにします。
2. CMS の守備範囲の枠に収める
CMS にはそれぞれあらかじめ想定された「守備範囲の枠」というものがあります。 典型的な守備範囲の例は「ブログ」「ウェブメディア」「 EC 」「 SNS 」などです。 CMS の本来の守備範囲の枠を越えれば越えるほど、 CMS のアップデートの対応コストが膨らみ、セキュリティリスクが高くなるので、長期間運用するサイトで CMS を利用する場合は「 CMS の守備範囲の枠」に収まる形での利用を心がけます。 これを実践するには「技術的には可能なことをあえてやらない」という難しい選択が必要になります。
3. 最小限のプラグインを利用する
人気の CMS には多くのプラグインがあります。 プラグインをどれだけ活用して高い費用対効果を実現するかが CMS を利用したサイト構築のキモとも言えます。 しかし、プラグインを多く使えば使うほどサイトの中長期の保守性は下がります。 理想は「本体だけ」での利用ですが、それだけでは必要な要件が満たせないことがあるので、どうしても外せない必要最小限のプラグインだけを利用します。
4. 定番のプラグインだけを利用する
CMS のプラグインを利用する場合は、開発が継続している定番人気のプラグインだけを利用して、マイナーなプラグインの利用は控えます。 マイナーなプラグインは「開発が中止される」「脆弱性が放置される」「問題が起こったときに十分な情報が広まらない」といったことが起こる可能性が高いため、長期間運用するサイトの場合はマイナーなプラグインは使わないようにします。
5. 最小限のライブラリだけを利用する
CMS の本体とプラグインの他にも、フロントエンドやミドルウェアで利用するソフトウェアライブラリがある場合は、最小限の利用に留めます。 特にフロントエンドの領域はトレンドの移り変わりが早いので、サイト構築のときに人気のライブラリが 3 年後も適切にメンテナンスされている保証はありません。 フロントエンドは特に利用するライブラリの数を少なくするように心がけます。
6. 小手先の SEO 対策を行わない
検索エンジンのアルゴリズムアップデートでかんたんに効果を失ってしまうような、小手先の SEO 対策――いわゆる「ブラックハット SEO 」は行いません。 「サイト構造やナビゲーションの工夫」「 HTML の構造やマークアップの最適化」「ページ表示パフォーマンスの改善」「良質なコンテンツの運用を促進するコンテンツモデルの設計」などにエネルギーを注ぎます。
以上です。
ということで、長期間運用するサイトを構築するときに気をつけていることのご紹介でした。 短期間運用するサイトと長期間運用するサイトでは気をつけるべきこと・やるべきことが大きく異なるということを読み取っていただければ幸いです。