Dyno

「 SEO に強い CMS 」の嘘

2018/04/29

今回は、巷でよく聞く「 ○○は SEO に強い CMS 」という主張について考えてみたいと思います。

早速結論から入りますが、 「 SEO に最強の CMS は A 」「 A という CMS は B という CMS より SEO に強い」といった主張や議論にはあまり意味がありません 。 また、 SEO に最強の CMS を強いて挙げることはできますが、それはあくまでも諸条件付きでのみ言えること です。

ですので、もしあなたが CMS の選定に迷っているときに「この CMS は SEO に強いです。なぜなら・・・」といった主張を見かけたら眉に唾をつけて読むようにしてください。

理由を以下に述べていきます。

まず、お話の前提についてお断りさせてください。

CMS には大きく分けて「 SaaS 型」と「設置型」の 2 種類があります。 「 SaaS 型」というのはウェブサイト構築サービスとしてウェブ上で利用できるタイプのもので、「設置型」は利用者が各自でダウンロードしてレンタルサーバー等に設置する必要があるタイプのものです。 それぞれの例は次のとおりです。

  • SaaS 型: Jimdo / Wix / Weebly / WordPress.com 等
  • 設置型: WordPress / Joomla! / Drupal / Concrete5 等

SaaS 型と設置型を同列に議論すると話がややこしくなるので、 今回はこのうちの後者「設置型」のみを対象としてお話をします(多くの CMS と SEO の議論は「設置型」を対象としています)

また、一定の予算を持って行う「ビジネス上の SEO 」とプライベートで行う「趣味の SEO 」を同列に語ることはできません。 ですので、 ここではあくまでも「ビジネス上の SEO 」のみを対象としてお話をします

前提についてのお話は以上です。 ここからは「 SEO に強い CMS 」という主張や議論になぜあまり意味がないのかという理由をあげていきます。

理由 1: SEO には CMS よりもずっと大切なことがあるから

理由のひとつめは SEO には CMS よりもずっと大切なことがあるから です。

小手先 SEO が通用した一昔前とは異なり、 近年 SEO において重要なのは「発信者の信頼」と「コンテンツの質」です 。 SEO 上強いサイトやページは実世界の「信頼できる人」のイメージにどんどん近づいてきています。

ですので、 SEO に強い CMS を延々と追求するぐらいであれば コンテンツの品質を高めて少しでも多く信頼を得ること に力を注ぐ方がよいでしょう。 CMS のレイヤーでの SEO 施策に効果が無いわけではありませんが、それとは比較にならないくらい、 CMS の上で行う運用――発信者の信頼やコンテンツの質の方がずっと大切です。

ですので、 CMS レイヤーの SEO を気にするのはコンテンツについての努力をやり尽くした後でも十分です。

理由 2: CMS の SEO 対策はどれも似たり寄ったりだから

理由の 2 つめは、一般に使われるメジャーな CMS であれば SEO 上の特性はどの CMS も大差無いから です。

継続的にメンテナンスされていて一定ボリュームの利用者のいるメジャー CMS において SEO に関する特徴はどれもそう大きく変わりません 。 例えば、 A という CMS に SEO 上有効な機能が追加されたら、そのライバルである B という CMS にも同等の機能が追加される、ということが日常的に起こっています。

メジャーな CMS の開発側にいるような人たちは他の CMS のことも知っていることがほとんどなので、「コンテンツ発信作業の効率化」「適切なマークアップ」「 UX を高めるナビゲーション」「サイトマップ」「反応速度向上のための高速化」等 SEO に効果のある機能はどの CMS にも共通で備わっています。

ですので、「サイトマップ xml が自動で生成できるから」「 SEO に強いプラグインがあるから」といった理由で特定の CMS が SEO に強いと主張する人がいますが、その多くは単に他の CMS を知らないだけだったりします。

Google の「検索エンジン最適化( SEO )スターターガイド」は SEO に取り組む人の必読書ですが、そこで述べられているポイントは大体どの CMS でも押さえることができます。

理由 3: CMS は必要に応じて拡張ができるから

理由の 3 つめは CMS は SEO に関する拡張ができるから です。

メジャーな CMS では多くの場合、 SEO に関わる部分は開発者やサイトビルダーが自由にカスタマイズできるようになっています 。 そして、 SEO に関する機能で、数学やコンピュータサイエンスの専門的な知識が求められるような難しいようなものは(私が知るかぎり)ありません 。 知識・技術的に難しいものは特に無いので、一定レベル以上の開発者やサイトビルダーなら誰でもそれらの機能を開発して追加することができます。

そのため、仮に A という CMS に備わった SEO 機能が B という CMS に無かったとしても、カスタムプラグインやテーマを開発すればいいだけの問題です。 技術や手間として大変なものもあまり無いので、それらの機能にかかる金額はサイト全体の制作費に比べてごくわずかです。

次の記事でも述べましたが、このあたりは CMS 間の違いよりもむしろ「 CMS をどう利用するか、どう設定するか」(つまり運用)の方が重要です。

「どの CMS が SEO に強いのか」を気にかけて長時間調査をするぐらいなら、 SEO を正しく理解していて実績のある人を探す作業に労力と時間をかけるべきです。

理由 4: SEO は CMS レイヤーのみでは決まらないから

最後の第 4 の理由は SEO は CMS のレイヤーだけで決まるものではないから です。

これは他のポイントとも少し重複しますが、 SEO には CMS のレイヤーだけでなく、 CMS よりも下の「インフラ」や「ミドルウェア」のレイヤーも、 CMS よりも上の「コンテンツ」や「運用」のレイヤーも影響します 。 SEO に関してどれだけよい機能を備えた CMS を選んだとしても、その他のレイヤーがボロボロでは十分な効果は得られません。

もし仮に、同じコンテンツ・同じドメイン・同じサーバで CMS だけを変えても、得られる結果の違いはほんの誤差程度でしょう。

継続的にメンテナンスされているメジャーな CMS を選ぶかぎり SEO のボトルネックが CMS にあることは稀なので、 SEO を気にするのであれば、「 CMS をどれにするか」で時間をかけるよりはシステム全体を見て SEO 上のボトルネックを探す方に時間をかける方がずっと有益です。

・・・

ここまで 4 つの理由をあげました。

  • 理由 1: SEO には CMS よりもずっと大切なことがあるから
  • 理由 2: CMS の SEO 対策はどれも似たり寄ったりだから
  • 理由 3: CMS は必要に応じて拡張ができるから
  • 理由 4: SEO は CMS レイヤーのみでは決まらないから

理由 2 と 3 は「特定の CMS が SEO 上強いと主張することはできないこと」を説明しています。 一方、理由 1 と理由 4 は「特定の CMS が SEO に強いということが仮にあったとしても、それは SEO 施策全体において相対的に重要でないこと」を説明しています。

これら 4 つの理由により、 CMS と SEO に関する多くの主張・議論にはあまり意味は無い、ということがおわかりいただけるかと思います。

たとえるなら、「この CMS が SEO に最強」と主張することは、カーレーシングにおいて「このタイヤが最速」と主張することと同じです。

まとめます。

まず、 SEO についての特性はどの CMS も似たり寄ったりなので、そもそも「最強の CMS というのは無い」というのと、多くの CMS は柔軟にカスタマイズできるので「 CMS の差よりもカスタマイズの差の方が大きい」ということが言えます。

加えて、 SEO は CMS のレイヤーのみで決まるものではないので、「どれだけ SEO を意識した CMS を使ってもその他のレイヤーがダメならダメ」という意味で、「 SEO に強い CMS / 弱い CMS 」という議論はあまり気にする必要はありません。

補足

上の主張に対していくつか補足します。

  • 冒頭に「「 SEO に最強の CMS 」というのを挙げることはできますが、それはあくまでも条件付きでのみ言えること」と述べました。 この条件は具体的には「 SEO に詳しい人に頼めない」「専門のサイトビルダーに頼めない」です。 状況としては「 CMS やテーマをカスタマイズせずにほぼそのまま使う必要がある or 使わざるを得ない」という状況です。 この条件の下にかぎって言うと「設置してそのまま使える、 SEO に工夫した高品質テーマのある CMS は強い」ということが言えます。 業界では常識ですが、それは具体的には WordPress です。 WordPress はいまや 60% 以上とも言われる圧倒的なシェアを持ち、他の CMS には無い規模・品質のテーマ市場を持っています。 「 SEO 上の工夫が施された高品質テーマが豊富にあるかどうか」という点だけで CMS を選ぶなら WordPress 一択と言ってしまってよいでしょう。
  • また、今回の主張はあくまでも「複数の CMS を比べてどちらが SEO に強いかを語るのはあまり意味が無い」と言っているだけであり、「 CMS というもの自体が SEO に効果が無い」と言っているわけではない点にご注意ください。 静的 HTML サイトと比較した場合「効率的なコンテンツ発信」等の点で CMS には断然メリットが多いので、 CMS そのものは SEO において大きな武器となります(ただし「適切に活用すれば」の話ですが・・・)。

最後にもう一度まとめてこのお話を終えたいと思います。

まとめ

  • カスタマイズして利用する前提であれば「他よりも SEO に強い CMS 」というのは特に無い。
    • どの CMS も SEO 上の機能の違いには大差なし。
    • もし CMS の機能に違いがあっても、その差よりも「 SEO を正しく理解して正しく構築できるサイトビルダー」の存在の有無の方が SEO にもたらす要因としては大きい。
    • ビジネス上で SEO を意識するかぎりは予算を付けてディレクターやサイトビルダーを雇うケースが大半だと思うので、ビジネス上の文脈では「どの CMS が SEO に強いか」はあまり気にしなくてよい。
  • 逆に、カスタマイズをしないで使う前提であれば、高品質の有料テーマが多くある CMS が強い。 2018 年現在は WordPress のシェアが圧倒的なので、その意味では WordPress が最強。
    • 「お金はかけられないけど、人的工数はかけられる」というのなら、とりあえず WordPress を選べば大きな間違いは無い。
    • 設置もかんたんで、得られる情報の量や、困ったときに頼りになるプロの数も圧倒的に WordPress が多い。

長文にお付き合いいただきありがとうございました。

ビジネスで CMS の利用を検討されていて、 CMS の SEO の特性について気になっている方のご参考になれば幸いです :)