WordPress が必要ないケースとは?
今回は ウェブサイトに WordPress が必要ないケース についてです。
近年サイト制作・運用のツールといえばほぼ必ず候補にあがるのが WordPress ですが、 WordPress はどんな要件にも対応できる万能ツールではありません。 WordPress は適切な目的と環境のもとで使うと高い価値・コストパフォーマンスを発揮してくれますが、不向きな場面で使うとかえってウェブ戦略の実行を阻害したりサイト運用の生産性を下げたり、といったことにもなりかねません。
これは WordPress にかぎらず、 CMS 全般、もっと言うとサイト制作・運用のプラットフォーム全般(以下「サイトプラットフォーム」)に共通の真実です。 目的・ターゲット・組織の能力・競争環境・マクロ環境等々……サイトと企業を取り巻く環境によって、最適なサイトプラットフォームというのは変わります。
特に近年は従来の CMS の他にも強力なサイトプラットフォームの選択肢が増えてきたため、「本当に WordPress が必要か?」「本当に CMS でよいのか?」という問いはますます重要になってきています。
そんなサイトプラットフォーム選定のお話の中でも今回は WordPress が必要ないケース についてです。
誤解のないように先にお断りですが、ここで「 WordPress が必要ないケース」というのは次の 2 つのパターンのこととして考えています。
- A) 静的サイトで十分なケース
- B) ウェブサービス型 CMS の方がよいケース
A) の「静的サイト」というのは CMS 等を使わずに HTML ファイルをそのまま設置するサイトを指しています。 B) の「ウェブサービス型の CMS 」というのは、 Squarespace ・ Wix ・ Jimdo に代表されるような、インストールやサーバーへの設置が必要ない SaaS (ASP) のサイト構築サービスのことです。
では本題です。
静的サイトに対する WordPress のメリット
サイトに WordPress が必要ないかどうか、つまり、上の A) B) のどちらかにあてはまるケースかどうかを考えるには、 静的サイトや ウェブサービス型 CMS に対する WordPress のメリット をまず知っておくことが必要です。 なぜなら「 WordPress が必要ないサイト≒ WordPress のメリットが活きないサイト」だからです。
ということで、最初に WordPress の相対的なメリットを確認しましょう。
まずは A) の静的サイトに対する WordPress のメリットです。 静的サイトに対するメリットにはいろいろなものがありますが、代表的なものには次のようなものがあります:
- HTML やサーバーの知識を持たない人が直接ページを追加・更新・削除できる
- ブロックエディター等のリッチな UI を使うことで投稿作業が省力化される
- 異なる権限レベルの複数の担当者が強調してサイト管理を行える
- コメントや問い合わせの機能を使ってサイトの訪問者と双方向のコミュニケーションができる
- 予約投稿・営業日カレンダー等の動的な機能を付加できる
- ページのスタイルを統一しデザインクオリティを保てる
- RSS ・サイトマップ・メタタグ・画像の最適化といった定番的な施策を低コストに行える
- WordPress の進化に乗っかる形でウェブトレンドに対応できる
細かくあげていくとたくさんありますが、大きなところではこのあたりで網羅できているでしょうか。
このようなメリットがあまり意味をなさないような要件のサイトは、わざわざ WordPress を使わなくても静的サイトで十分です。 例えば
- 担当者が HTML やサーバーについて十分な知識を持っている
- ブロックエディター等よりも生産性の高い投稿方式が実現できる
- 担当者が 1 人または数人と少ない
- サイトの訪問者との間で双方向のコミュニケーションが必要ない
- サイト内でページ間のスタイルがちぐはぐでも問題ない
等の条件を満たすケースでは、 WordPress が必要ない可能性はとても高いでしょう。
ウェブサービス型 CMS に対する WordPress のメリット
続いて、 ウェブサービス型 CMS に対する WordPress のメリットです。
- サイト構成や機能・デザインの自由度が高い
- 環境や戦略の変化に合わせて柔軟にサイトを進化させていきやすい
- データを自社で所有できるのでデータのバックアップや再利用がしやすい
- 将来別のプラットフォームに乗り換えるときの移行がスムーズ
- 突然の料金の変更やサービスの終了の影響を受けるリスクが低い
静的サイトと同じように、これらのメリットにあまり意味が無いサイトであれば、わざわざ WordPress で作らなくてもウェブサービスを使えば十分です。 例えば
- サイト構成がシンプルで、デザインもありもののテンプレートで十分だ
- 環境や戦略の変化に対応させてサイトを進化させるつもりは無い
- 将来別のプラットフォームに乗り換えるときは一から作り直すので移行は必要ない
- 料金の変更やサービスの終了があったときには仕方無いものとして許容できる
等の条件にあてはまる場合は WordPress が必要ない可能性は高いでしょう。
WordPress が必要ないケース
最後に、もっと具体的に WordPress が必要ないケースの典型例をあげてみます。 もちろんケースバイケースなので一概には言えませんが、次のようなサイトは WordPress が必要ない可能性が高いと考えられます。
- 名刺サイト
- キャンペーンサイト
- ランディングページサイト
- ファイル公開サイト
名刺サイト は、私が便宜上勝手に付けた呼称で一般的ではありませんが、「名刺代わり」程度の感覚で「とりあえず」で作られるサイトのことです。 それらのサイトは目的やターゲットや運用方針があいまいです。 そんなサイトは、多くの場合作られた後しばらくすると放置される運命にあります。 この場合は、 WordPress は使わず静的サイトとして作る方がよいでしょう。 あるいはそもそもサイトを作るべきかどうかというところから考え直した方がよいかもしれません。 静的サイトで作った後「もっと積極的に自社サイトを活用していきたい」となったときに改めて WordPress 化するのでも十分です。
キャンペーンサイト は、短期の販促キャンペーンのために作られるサイトです。 詳細の要件によって変わってくるので一概には言えませんが、例えば、数ページのサイトを作ってそこに「いいねボタンをつけたい」「申し込みフォームを設置したい」といったシンプルなキャンペーンサイトであれば、静的サイト(と必要に応じて少しのスクリプト)だけで事足りる可能性が高いです。
ランディングページサイト は、検索エンジンや紙媒体からの誘導口として作る「ランディングページ」用のサイトです。 ランディングページサイトもキャンペーンサイトと同じで、必要な機能もページ数も少ない傾向にあります。 もちろんケースバイケースですが、運用方法によっては大幅なデザインの変更を繰り返すため、 WordPress の編集機能を使っていると効率が悪くなることもあります。
ファイル公開サイト は、ただファイルを公開するためだけのサイトです。 画像・ PDF ・ csv ・ Excel ・ Word 等のファイルを公開できればよくて、複雑な運用も特に必要ないのであれば、必ずしも WordPress は必要ありません。 WordPress には非常に強力なメディア機能がありますが、ただファイルを公開するだけであれば WordPress 以外にも多くの選択肢があります。
……
ということで、「 WordPress が必要ないケースとは?」というお話でした。 実際にはケースバイケースで一概には言えませんが、おおまかな判断の目安としてご参考になれば幸いです :-D