「マイナーな CMS を選ぶのはあり?なし?」お答えします
今回は自社サイトの管理にマイナーな CMS を使うことはありかなしかというポイントについてお話しします。
前提
今回は「ビジネスで利用する CMS を選ぶ場面」を想定しています。
また、「マイナーな CMS 」の「マイナー」の線引きには厳密なものは考えていませんが、イメージとしては「国内のシェアが 1% 以上あるものをメジャーなもの、それ以外はマイナーなもの」といったイメージで捉えていただくとよいかと思います(その基準で言うと、国内では WordPress のシェアが 80% 以上と圧倒的なので、ほとんどの CMS がシェアが 1% 未満の「マイナー CMS 」に分類されます。ですので、「マイナー」ということばにネガティブな意味は込めていません)。
対象読者
- 中小企業の経営者・ウェブ担当者の方
マイナーな CMS を選ぶのはあり?なし?
早速本題ですが、マイナーな CMS を選ぶことはありかなしかについてまず言えるのは「 マイナーかどうかの 1 点だけで一概に判断はできない 」ということです。
重要なのはメリットとデメリットのバランスであり、それは CMS がメジャーであろうとマイナーであろうと変わりません。 その CMS を選ぶことのメリットがデメリットを上回るようであればその CMS を選べばよいですし、逆にデメリットの方が上回るようならその CMS の採用はやめておくべきです。
もうひとつ言えるのは「 メジャーな CMS にはメジャーであることによるさまざまなメリットがある 」ということです。
メジャーな CMS には次のようなメリットがあります:
- 情報が多い
- 無料や安価で使えるプラグインが多い
- 頼れるプロが多い
- 適正価格でプロに依頼できる
- バグ対応が速い
- トレンドを押さえられる
- 突然使えなくなるリスクが低い
メジャーな CMS を選べば必ずこれらのメリットが得られるというわけではありませんが、一般的な傾向としてメジャーな CMS にはこのようにさまざまなメリットがあります。
マイナーな CMS に伴うデメリットはこの「メジャーな CMS 」のメリットの裏返しと考えていただくとよいでしょう。
マイナーな CMS のデメリット:
- 情報が少ないことがある
- 無料や安価で使えるプラグインが少ない、または無い
- 頼れるプロが少ない
- 適正価格でプロに依頼できないことがある
- バグ対応が遅いことがある
- トレンドから離れることがある
- 突然使えなくなるリスクが高い
ただしこれはあくまでも全体的な傾向に過ぎず、シェアの低い CMS には必ずこれらのデメリットが伴うというわけではないので、そこは誤解しないようにしてください。
これらのデメリットの中でも特にインパクトが大きいのは「突然使えなくなるリスク」です。 マイナーというのは要は「利用者が少ない」ということですが、利用者が少ないと次のようなことが発生するリスクが高まります。
- メンテナンス活動が停滞または停止する
- 十分なサポートが行われなくなる
- 開発ベンダーが事業を停止する
このような事象が発生した結果として、実質的に CMS を使い続けることができなくなったりします。
この「使えなくなるリスク」という点において重要なのは「運用期間中のシェア」です。 導入するそのタイミングのシェアだけを見ていてはいけません。 一般に CMS というのは、いったん導入すれば少なくとも数年〜長くて 7 〜 8 年は使うものなので、 3 年なら 3 年、 7 年なら 7 年、その CMS を使う予定の期間の終わりまでどのようなシェアになるのかを予測した上で判断を行う必要があります。
極端なケースでいえば、現在のシェアが 5% ある CMS であっても 5 年後のシェアが 0.5% になることが予測される CMS は「マイナー CMS 」という評価で見るべきです。 CMS の世界にも流行り廃りがあるので、現在メジャーだった CMS が 5 年後もメジャーであり続けるという保証はありません。 実際、現在「メジャーな CMS 」と位置付けられる CMS の中には 5 年後のシェアが数分の一に減っているであろうと予測されるものもいくつかあります。
ちなみに、近未来のシェアを予測する上で役立つ情報のひとつは直近のシェアのトレンドです。 世界的なシェアであれば W3Techs 等で公表されているのでこれらを参考にするとよいでしょう:
ということで、 結論としては「マイナーな CMS はありかなしか?」という質問への答えは「あり」 です。 ただし、メジャーな CMS にはメジャーであるがゆえのさまざまなメリットがあるためそこを無視したり軽視したりすべきではありません。 シェアの影響も考慮した上でメリット・デメリットを比較して、メリットがデメリットを十分に上回ると判断できればその CMS を採用すればよいでしょう。
多くの方は CMS を選ぶときに、「シェアの影響を理解せずリスクの高いマイナーな CMS を選んでしまう」か「自信が無いのでとりあえずメジャーな CMS を選ぶ」のどちらか極端な選択肢をとりがちです。 時代の流れとして今後ますます重要になるウェブサイトのプラットフォームをそのような単純な評価で選んでしまうのはたいへん危険です。
ぜひ、シェアの影響は理解しながら、シェアだけに捉われることなく、自社の戦略と環境に合った最適な CMS を選ぶようにしてください。
おわりに
ということで、マイナーな CMS を選ぶのはありかなしかというお話でした。
尚、ここではわかりやすさを優先し対象を CMS としていますが、 CMS 以外のウェブサイト運用プラットフォーム――フレームワークや SSG 等でも同じロジックが通用すると思います。
自社サイトや自社のビジネスで利用する CMS の選定をされている方のご参考になれば幸いです。