Dyno

WordPress がこれほどまで人気な理由

今回は CMS を使ってサイト構築を行うウェブ技術者の立場から WordPress が人気な理由 について説明してみたいと思います。

最初に 2 点お断りです。

  • 本記事の想定読者は中小企業の経営者・ウェブ担当者の方です。そのため「細部の正確さ」よりも「わかりやすさ」を優先しています。
  • 本記事の筆者にとって WordPress は「利用する CMS のひとつ」です。要件が合えば WordPress をおすすめしますが、合わなければ無理におすすめすることはありません。 WordPress に対してニュートラルなのでわりかしフェアな説明ができていると思います。

CMS といえば WordPress

過去記事でも述べていますが、本稿作成の 2019 年時点で CMS といえば WordPress です。 これは間違いの無い事実で、これを否定するウェブ制作会社があれば、それはその人が嘘を言っているか単純に知識不足です(笑)

CMS マーケットにおける WordPress のシェアは世界全体で 60%、日本国内では 80% 以上 と言われており、現状 CMS で新たに作られるサイトのうち 2 つに 1 つ以上で必ず WordPress が使われている というような状況です。 WordPress と同じ 2000 年前後に誕生した CMS はほとんどが 2010 年以降は一貫してシェアを落としていますが、 WordPress はほぼ唯一 2010 年以降もシェアを伸ばしてきた特異な CMS です。

WordPress はなぜここまで圧倒的な人気を集めるに至ったのでしょうか。

なぜ WordPress は人気なのか

WordPress の人気の理由を一言で言うなら その特徴と時代の流れがちょうど噛み合ったから と言えるかと思います。

時代の流れに噛み合った WordPress の特徴には例えば次のようなものがあります。

  • ブログ
  • シンプル
  • オープンソース
  • PHP

ブログ

WordPress は 2003 年にブログ特化型の CMS として誕生しました。 2004 年というのは、インターネットが広く普及し、一般の人々が世界に向けて発信できる「ブログ」が大流行し始めた時期です。 すでにその頃には他の CMS が多数存在していましたが、 WordPress は「ブログ」というところに特化することによって人気を集めました。

シンプル

UI/UX ということばは近年でこそ一般用語となった感じがありますが、 2000 年ひと桁代の頃は一部の専門家のみが使う専門用語でした。 WordPress はそんな頃から技術者以外にもやさしい CMS としていち早く UI/UX に注力していました。 その結果として生まれた「 5 分間インストール」や「ワンクリックプラグイン導入」「 WYSIWYG エディタ同梱」等の特徴が、「自分のブログを持ちたい」「自由に情報発信をしたい」と考える多くの人をひきつけました。

オープンソース

WordPress は「オープンソース」のソフトウェアです。 オープンソースの概念の核は「誰でも自由にソースコードを閲覧・改変できること」ですが、その特徴のひとつに「無料で利用できること」があります。 無料であるということは(当時は特に)大きな魅力で、オープンソースの CMS はウェブ制作業界の大部分を占める中小企業、そして、趣味でブログを書いたりサイトを作ったりする人々から大きな支持を集めました。 ちなみに、 2019 年時点でも CMS シェア上位の大半はオープンソースの CMS が占めています。

PHP

WordPress のソースコードは「 PHP 」というプログラミング言語で書かれていますが、 WorPress のシェアが大きく伸びた 2000 年ひと桁台というのは PHP そのものが普及度という意味で大きな成功を収めた時代でした。 「 PHP の人気が高い → PHP が使えるレンタルサーバーが増える → さらに PHP の人気が高まる」という強化サイクルにより、 PHP 人気は爆発的に高まりました。 2019 年時点で WordPress に次いでシェアの高い CMS 「 Joomla! 」と「 Drupal 」も PHP で書かれているので、「 PHP で書かれていること」が 2000 年代ひと桁台に CMS が大きなシェアを獲得する必須条件だったとも言えます。

結果として、これらの特徴と時代の流れが噛み合った結果、登場からわずか 7 年後の 2010 年に WordPress のシェアは 50% を越えました。

これらが WordPress が短期間のうちに人気 No.1 になったおおよその理由です。 他にもさまざまな要因がありますが、他の CMS の特徴や状況も合わせて考えると、 WordPress とその他の CMS を分けた決定的な要因はこのあたりにあると考えてよいと思います。

なぜ WordPress は人気を保てているのか

人気 No. 1 になった後も WordPress のシェアの伸び続けましたが、そのフェーズでの成功要因は 2000 年ひと桁台のものとは少し異なります。

WordPress が人気を維持し続けられた要因には例えば次のようなものがあります。

  • 利用者やテーマ作成者からなる大きな WordPress 生態系ができ人気がさらに人気を呼んだ(いわゆる「ネットワーク外部性」)
  • 人気の CMS になった後もシンプルさという価値を捨てずライトユーザを惹きつけ続けた
  • 既存の利用者を大切にし互換性を保った形での更新を提供し続けた

このあたりについてそれぞれ細かく見ていくこともできますが、やはり一言でいうと、大きいのはネットワーク外部性でしょう。 10 年以上の長きにわたりトップに君臨し続けている WordPress は、もう他の CMS とは単純に比較ができない唯一無二な CMS になっています。 その地位が他の CMS によって脅かされるシナリオというのはなかなか思い描くのが難しいですし、もしこの先 WordPress の地位を脅かすものが出てくるとしても、それは他の CMS ではなくて CMS にとって代わる何か新しいもの、ではないかと思います。

というわけで WordPress が人気な理由についてのお話でした。

データを見て検証しないことには確かな裏付けはできませんが、おおよその認識としては間違っていないのではないかと思います。 ご参考になれば幸いです :D